Column: 004

顔無しの村

イケメンも美女も関係なし

2019.09.13

認知症世界。この世界には、みんな同じような顔に見えてしまったり、人を顔で見分けることはできない場所、「顔無しの村」があるようです。この村では、顔ではなく、声や体の特徴、そして何よりもその人との大切な思い出でつながるのです。

人の顔や名前を覚えるのが得意だとか、苦手だとか、という話は、なにげない会話の中にも出てきます。会社勤めを始めてから、この人どこかで会ったことがあるような気がするけれど名前が出てこないというような経験は誰でもあると思います。

でも、会社員として働いていた頃、とても不思議なことが起こりました。
会社の受付から、自分が担当するお客さんがきたと連絡を受け、受付に行ったのですが、どの人が自分の顔馴染みのお得意さんなのか、全くわからないのです*1。

また、ある時には、通勤中に後ろから見知らぬ男性に声をかけられ、親しげな人だなと思って笑顔で挨拶を返しました。すると後になって同僚から「今朝、社長とすごく楽しそうに話してたね」といわれ、あの男性が昔からよく知っていた社長だったことを知りました。
話の内容から同じ会社の人だろうなとは思ったのですが、顔からは社長だということがわかりませんでした*1。まさか社長だったとは思いもしなかったので、驚きましたが、同僚が楽しそうだったというのなら、失礼はなかったのだろうとほっとしました。

仕事中、自分が探している人の顔がわからないときは、すぐに近くの同僚に聞きます。声を掛けてきた相手が、顔からは誰かわからなくても、話しているうちに話の内容からだんだんその人と自分の関係性を思い出していきます。

会社の仲間だけでなく、長年一緒に過ごした家族の顔、古くからの友人の顔も頭の中で思い出せなくなってきました*1。
それ自体は本当に悲しいことですが、一緒に過ごした思い出が色褪せることはありません。
逆に町中を歩いている時に、通りすがりの人が自分の知り合いに見えたので*2、親しげに声をかけたら、全く別人で怪訝な顔をされたこともあります。「ナンパと勘違いされてしまうんですよね(笑)」。

自分が担当しているお得意先やよく会う友人・家族の顔だけでも忘れないようにしたいと思い、オリジナルの名前入りの写真名簿をつくり、頻繁に眺めていた時期もあるのですが、写真で覚えた顔と目の前の人の顔がうまく結びつかないことがあり断念しました*2。どうやら、2次元である写真の見え方と3次元である実際の顔の見え方は私には少し違うようです。
そうそう、テレビドラマを見ていても、役者さんの顔が見分けられず*2、ドラマは諦めていたのですが、この前面白いことに気づいたのです。アニメであれば、間違うことなく見分けられるのです。
人の顔を見分ける能力というのは、特殊なものですね。

最近では、人の顔を覚える、思い出す、ということについて自分の脳内の記憶装置を使うことは諦め、思い切ってその都度人に聞くことにしました。みんな快く教えてくれますし、自分だけではうまくいかずに苦労していたことも案外簡単に解決できることがわかりました。
始めてあった人には「次会った時、わからないと思うけど、気軽に声をかけてねー」ということにしています。

携帯やスマホの容量が撮影した写真でいっぱいになったら、外部の保存サービスを利用したり、別のパソコンに保存したりしますよね。最初は覚えられないことにもどかしさを感じていましたが、少し考え方を変えて、周りの仲間や家族に頼ってみようと切り替えられた時から、人に聞くことにも抵抗がなくなりました。

Barrier:

「顔無しの村」に直面する背景には、
以下2つの認知症に伴う心身機能の障害が考えられます。

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  1. 丹野智文さんの知恵

    2019.09.13 投稿

    人に聞く

    丹野智文さんの知恵

    2019.09.13 投稿

    職場では、認知症であることをオープンにしています。仕事中、わからないことがあれば、上司にも年の離れた新入社員にも聞くようにしています。「認知症の症状で人の顔がわからなくなってしまうから、〇〇さんはどの方か教えてほしい」ときちんと伝えて聞けば、みんな親切に教えてくれます。

  2. 丹野智文さんの知恵

    2019.09.13 投稿

    相手から声をかけてもらう

    丹野智文さんの知恵

    2019.09.13 投稿

    人と別れる時、僕は必ず、「次会う時には顔を忘れてれているので、声をかけてください」と言います。自分では覚えられないので、お願いしておくんです。そうすると、次会った時に自分が覚えていなくて無視する形になってしまってもお互い嫌な思いをせずに済みますし、相手の方から声をかけてくれるので助かっています。

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