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認知症当事者ナレッジライブラリーとは

「認知症当事者ナレッジライブラリー」は、認知症のある方の発症から現在までのあゆみ、喜びや実現したいこと、日常生活の困りごとや苦労(生活課題)と背景にある心身機能のトラブル、これとつきあう暮らしの知恵を、ご本人の「語り」に基づいてまとめたデータベースです。

認知症当事者ナレッジライブラリーは、認知症未来共創ハブが実施している当事者インタビューにご協力くださった認知症のある方やご家族、支援者と研究者、デザイナーができるかぎりやりとりを重ねながら分析・編集しています。

認知症未来共創ハブの当事者インタビューとは

認知症未来共創ハブでは、当事者の思い・体験と知恵を中心に「認知症とともによりよく生きるいまと未来」を創る活動の中核として、認知症当事者インタビューをすすめています。
認知症当事者インタビューは、認知症のある方やそのグループ、ご家族や支援者等の「語り」を蓄積し、それを当事者とともに分析・編集、発信することにより、

1. 認知症とともに生きる方の喜び・夢、苦労や悩み、知恵を皆さんと共有し、認知症とともに生きる多様な生活モデルを認知症当事者とともに探索すること
2. 認知症当事者とともに、生活課題を解決し、生活を豊かにする施策・事業・サービス・地域を創ること
3. 認知症とともによりよく生きるいまと未来を支える政策へと活用すること
4. これらをつうじて認知症当事者の社会参加を推進すること

を目的とするものです。 当面全国各地で100人の認知症当事者にお会いして、継続的にお話をうかがっていくことにしています(2020年1月末現在約90人)。

なお、当事者インタビューに参加ご希望の方、ご協力くださる方は お問い合わせフォーム からご連絡ください。

*本インタビューは、慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科研究倫理審査委員会の承認を受けて実施しています「認知症のある方の生活のしづらさと工夫、生きがいと喜び-認知症とともによりよく生きる未来の共創に向けて(受理番号2019-20)」。

データベースができるまで

【インタビュー】

研究協力に同意をくださった認知症のある方(原則的に診断を受けた方)を対象に、60〜90分程度インタビューを実施しています。基本的な質問項目は以下のとおりですが、ご本人の興味や関心、課題にそって内容を調整しながら、語って頂いています。
・これまでのあゆみと認知症の発症経緯
・日常生活の喜びや生きがい、実現したいこと
・暮らしのなかでの苦労や困りごと、工夫や知恵など
・その他

【整理・分析・編集】

認知症のある方の語りに基づき、認知症の発症から現在までのあゆみ、ご本人の喜び、それを阻害している生活領域別の困りごとや生活課題、工夫と知恵、困りごとの背景にあると考えられる心身機能のトラブルついて整理・分析をすすめます。
整理・分析の過程で、適宜ご本人、ご本人の同意があればご家族や支援者の視点からも調査項目に対する回答や補足を頂き、編集を行います。

【公開】

認知症当事者ナレッジライブラリーとして広く共有させて頂くことについてご本人の同意が得られた場合には、内容の確認を頂き、インタビューの内容・分析結果がナレッジライブラリーとして公開されます。

認知症当事者ナレッジライブラリーの構成

【ひと】

お一人おひとりのプロフィールやこれまでのあゆみ、日々の喜びややりたいことを掲載します。そして、ときにその喜びややりたいことの実現を阻害している生活上の困りごとを「生活課題」として整理し、背景として考えられるさまざまな要因のうち、心身機能のトラブルを結びつけ、困りごととつきあう知恵とともに一覧にしています。

【生活課題】

認知症のある方は、いつどこでどんな状況で生活のしづらさを感じているのか、インタビューでおうかがいしたお話を、180のキーワード(生活課題)、11の生活領域に整理・分類したものが生活11分類・生活課題のマップです。 認知症のある方の日常生活を360度カバーできるように、衣(着る)・食(食べる)・住(住む)・金(お金をまかなう)・買(買い物をする)・健(心身をケアする)・移(移動する)・交(交際する)・遊(遊ぶ)・学(学ぶ)・働(働く)の11の領域にまとめています。 なお、この180という数はインタビューを重ねるにつれて、新たな発見があった場合は増えていくため、あくまで現時点のものです。

189のキーワード(生活課題

たとえば、日常的におこなう「着替え」という生活シーン。
服を着替えるとき、その日の気候に合った服を選ぶことが難しい、上下の服の組み合わせを考えることが大変、どこに服をしまったか忘れている、袖に腕を通すのに時間がかかる、靴下を上下逆さまに履いている…など、着替えをするという中でもさまざまな困りごとがあることがわかります。
それまで外出が好きだった方でも、このような生活のしづらさがあることで、外出がおっくうになってしまうこともあります。

【心身機能障害】

認知症のある方の生活のしづらさにはさまざまな背景がありますが、ここではまず心身機能障害に着目します。アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症などの疾患による心身機能の障害は、一般的には以下のような中核症状、行動・心理症状と説明されます。

心身機能障害

しかし、この症状の分類と表現はあくまで医療者・介護者側の視点が強く、認知症のある方の、心と体にどんなことが起きているのかを理解することは困難です。
そこで、認知症のある方ご本人へのインタビューでは、心身機能のトラブル、不調、誤作動を可能な限りご本人の言葉で語って頂き、ご本人の視点から64の障害に整理しました。この64という数も現時点のものとなります。

64の障害

たとえば、認知症のある方が着替えをするとき、服の袖にスムーズに腕を通すことが難しく、着替えに膨大な時間がかかる場合があります。「服の着方を忘れてしまったのでは?」と捉えられることもある、「服の袖に腕を通すことが難しい」背景には、色々な理由があります。

ハンガーにかかった服に手を伸ばしてみるものの、距離感がつかめずなかなか服を手に取ることができない。 服の上下左右裏表がはっきりせず、奥行きの感覚がつかめないため、どこに腕を通したら着られるのかわからない。 どうにか袖に手が通っても、途中で引っかかってしまい、どの方向に手を伸ばせばいいのか困ってしまう。 腕の進む方向が見つかっても、自分の腕の感覚や動かし方がわからず、途中で動作が止まってしまう。

距離感覚がつかめない

奥行きの感覚がつかめない

方向・向きがわからない

自分の身体を認識・作動できない

このように、服の袖に腕を通すことが難しくなる背景には、単に服の着方を忘れてしまったのではなく、上記にあげたような心身機能の障害、その組み合わせがあります。さらに、認知症のある方を取り巻く周囲の人々がこうしたことを十分理解できていない状況も、生活のしづらさにつながっているのです。

そして、心身機能のトラブルは、もちろん認知症のある方が全員同じものをかかえているのではなく、それぞれ人によって異なり、グラデーションがあると言えます。

実施体制

全体統括:堀田聰子(慶應義塾大学)
調査企画・設計:筧裕介(慶應義塾大学)
調査実施:矢野真沙代(慶應義塾大学)・竹井真希(issue+design)
調査分析・データベース企画・運営:稲垣美帆・佐藤理恵(issue+design)・青木佑(慶應義塾大学)
データベース開発:清水恒平・稲葉千恵美・小野生・橋場亮介(オフィスナイス)

認知症当事者ナレッジライブラリーは、内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「認知症の本人と家族の視点を重視するマルチモーダルなヒューマン・インタラクション技術による自立共生支援AIの研究開発と社会実装」の成果の一部をご紹介するものです。

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