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「第34回日本老年精神医学会」シンポジウムに運営委員が登壇しました

2019年6月6日〜8日、宮城県仙台市にて、日本老年精神医学会主催「第34回日本老年精神医学会」が開催されました。

同会特別企画シンポジウム「認知症のある人の暮らしをともに紐解き未来をつくる;認知症未来共創ハブの活動を手がかりに」には、認知症未来共創ハブ(以下ハブ)の運営委員として、堀田聰子、筧裕介、猿渡進平、徳田雄人と、認知症とともに生きる当事者であり、ハブの大切なパートナーの樋口直美さん、評議員もお務めくださっている丹野智文さん、渡邊康平さんが登壇しました。

冒頭、座長の粟田主一先生から「(ハブは)様々な分野との協働と当事者の参画のもと、新たな文化を作り出すムーブメントになり得る」とご紹介いただき、これを受ける形でハブ代表の堀田聰子(慶應義塾大学大学院)から、発足の経緯や目指すべき未来像、それに近づくためのハブの機能と当面の活動などをお話しさせていただきました。

「未来の風景をともに創っていく」

レビー小体型認知症と診断を受けたことをきっかけに、執筆活動や当事者研究に取り組んでいる樋口直美さんは、
 「自らの症状や困りごとを語ることで、自身の症状が消えることはないが、周囲に知ってもらうことによって生きやすくなる」
 「医療者には、認知症とともに生きる本人が社会に発信している情報をぜひ知ってほしいし、広めてもらいたい」

と、認知症があっても、その人らしさを大切に、普通の人として接して欲しいという思いを語りました。

運営委員の筧裕介(issue+design)は、認知症のある方の喜びや生きがい、暮らしの中での困りごとについてのインタビューとその背景にある認知機能のトラブルの可視化の取組みを紹介し、
 「認知症のある方が何にどう困っているのか、ということが、身近な存在であるはずの家族や医療・介護職の人たちにも伝わっていない現状がある。私たちの取組みによって、両者のコミュニケーションを円滑にしたい」
 「認知症のある方にとって使いづらいサービスや商品が社会にあふれているのは、使い手に対する作り手の理解が不足しているからではないか。認知症のある方にとって使いやすいものは、あらゆる人にとって使いやすいものであるはず。サービスや商品開発の際の指針となるような取り組みにしていきたい」

と、認知症のある方の生活課題や困りごとに対する周囲や社会の理解不足を指摘し、ハブの取組みにより期待される効果をお伝えしました。

福岡県大牟田市で、認知症のある方が地域で安心して暮らしていくことを目的に、官民協働の体制構築と人材育成、認知症に関する啓発・地域づくりに取り組んできた運営委員の猿渡進平(医療法人静光園 白川病院)は、
 「認知症のある方を地域で見守る体制づくりを進め、自宅での生活を継続できる認知症の人は増えてきた。しかしその一方で、『認知症の人は支えられる対象である』という意識を植え付けてしまったのではないだろうかという気づきがあった」
 「専門職や行政だけで進めるのではなく、認知症のある方も地域の担い手として、未来の風景を共に創っていける仕掛けをつくっていく必要がある」

と、大牟田市での活動を紹介し、地域で住民とともに歩んできたからこそ得られた気づきを会場の皆さんと共有しました。

認知症のある方、家族、医療者、介護者がともに地域をつくることを目指す「認知症フレンドリーコミュニティー(DFC)」の普及に携わる運営委員の徳田雄人(NPO法人認知症フレンドシップクラブ)は、
 「認知症のある方の生活の課題は医療・福祉だけの問題ではなく、あらゆる企業やセクターが関係している。DFCを加速していくためには、マルチステークホルダーで対話の場をつくっていくことが大切」
 「『認知症のある方をゲストに迎えてお話を伺う』のでなく、みんなが同じ立場で議論できる場をつくってはどうか」

と、日本を代表するDFCの一つである町田市の事例を紹介するとともに、今後の地域づくりに必要な視点を提案しました。

「バリアになっているのは人ではないか」

シンポジウム後半には、認知症当事者である丹野智文さん(おれんじドア、認知症当事者ネットワークみやぎ)、渡邊康平さん(三豊市立西香川病院)も登壇しました。

現在も企業で働き続けながら、全国各地で講演会やピアサポートの活動をしている丹野さんは、
 「認知症の人であっても、周りに教えてもらえればできることがあるということを忘れないでほしい。認知症バリアフリーというが、バリアになっているのは環境や設備ではなく、人ではないだろうか」
と、本学会の主たる参加者である医療関係者へ投げかけました。

また、病院のオレンジカフェで非常勤相談員としてピアサポートを行う渡邊さんは、
 「まだまだ認知症に対して偏見を持っている人も多く、直接語りかけることの必要性を感じている。自分の地域を変えていくには何から始めたらいいかを考え、支援してくれる人と話し合いながら進んでいきたい」
と、今後のご自身の地域への期待も含めてお話しくださいました。

医師を中心とする医療関係者が集う本学会では、認知症未来共創ハブの構想や各運営委員と当事者の活動を紹介し、それぞれが活動の中で感じている思いや考えを共有するという貴重な機会をいただきました。

参照:第34回日本老年精神医学会ウェブサイト
文責:青木 佑(慶應義塾大学大学院)