となりのおた助くん

認知症のあるおじいちゃんとの暮らしの中での「ちょっと困った」をスマホやITサービスの力を借りて解決するお助け連載。みなさんも一緒に身近なデジタルツールを活用して日々の小さな手間を減らしていきませんか。

vol. 11

おじいちゃんの声が文字になる!

キーボードを使わず音声でテキスト入力

この連載では、認知症のあるおじいちゃんの周りでおこる日々の“ちょっとした困りごと”を、物知りおた助くんがデジタルツールを困っている人に紹介して解決していきます。デジタルツールというとなんだか馴染みが無く敬遠してしまうという人も大丈夫、あなたが毎日使っているスマホもその一つです。特別なものや知識は必要ありません。認知症のある方、また関わるご家族、支援者の方、地域の人たちの暮らしがほんの少しでも便利になるような連載を目指していきます。

今回の登場人物

  • おた助くん

    おた助くん

    学くんの同級生で、スマホ、パソコンなど最新の技術に詳しい高校生。

  • 学くん

    学くん

    なんでもチャレンジしてみる高校生。認知症のあるおじいちゃんと暮らしている。

  • おじいちゃん

    おじいちゃん

    元自動車会社勤務。学くんと一緒に新しいものにもチャレンジする。周りの人に頼るのが上手な、孫思いの優しいおじいちゃん。

  • 鬼頭さん

    きとうさん

    地域包括支援センターの職員。「認知症フレンドリー」な社会を目指して、認知症のある方やご家族とともに活動をしている。認知症のある方の暮らしや制度に詳しい専門職。

おじいちゃん
おじいちゃん

ヘイ Siri, LINEを起動して。

学くん
学くん

おじいちゃん、Siri使いこなしてるね〜!

おじいちゃん
おじいちゃん

だいぶSiriと仲良くなった気がするよ。わざわざアプリを探さなくて済むようになったしね。しかし、メッセージはキーボードで打ち込まないといけないからそこからがまた大変じゃ。これもスマホが聞き取っても文字にでもしてくれたら楽なんだがなぁ。

学くん
学くん

ふーんなるほど。たしかにスマホのキーボード慣れないと使いづらいかもね。結構使ってるおじいちゃんでもそう思うのか〜。

おた助
おた助

それなら音声入力を使ってみたらどうですか?

おじいちゃん
おじいちゃん

音声入力?Siriとはまた違う機能なのかな?

おた助
おた助

そうですね、Siriは話しかけて操作をしてくれるので、音声操作と言ったほうがいいかもしれません。音声入力は同じようにスマホに話しかけるとその内容を文字にしてくれ、それをメッセージで送ったり、メモとして残したり、検索したりと使えます。

おじいちゃん
おじいちゃん

ほほー!それはまさに今教えてほしいな。最近、キーボードを何回もタップしたり、フリック入力するのがどうも苦手でね。

おた助
おた助

そうなんですね。操作自体はとても簡単で、キーボードの右端にあるこのマイクをタップして話しかければそれが文字になります。メッセージでしたら、聞き取られた文字を確認して特に間違いがなければそのまま送信ボタンを押すだけになります。

学くん
学くん

それはいいね!じゃあ今回もおた助くんに教わっちゃおう!

おた助
おた助

OK! Siriを使って音声で操作が出来るようになったら音声で文字を入力するのもお手の物かもしれないね。これもちょっとコツがいるかもしれないけど覚えたらスマホを操作するのが楽しくなるかも。

おじいちゃん
おじいちゃん

それではよろしく!

音声入力とは

スマートフォンやPCで使用するキーボードやマウスの代わりに、機器に内蔵のマイクに向かって喋りかけた音声を認識して文字化してくれる機能。メッセージアプリやメモアプリ、地図や検索まで、キーボード入力画面右下のマイクのボタンをタップしスマートフォンに話しかければ音声を認識して文字に変換して入力をしてくれます。フリック入力が苦手だったり、キーボードが小さくて打ちづらいなど操作に不安がある時、一度音声入力を試してみてはどうでしょうか。

基本の設定

今回もiPhoneで説明していきます。まずは設定アプリから音声入力機能がオンになっているか確認していきましょう。

左側写真:ホーム画面の設定アプリをタップして開きます。スクロールして「一般」をタップします。
右側写真:画面下部にある「キーボード」をタップします。


左側写真:画面中央にある「音声入力」の横にあるボタンをタップします。緑色に変われば設定が有効になっています。続いて音声入力の言語設定を行います。「音声入力」の一段下にある「音声入力言語」をタップします。
右側写真:音声入力が有効になっている言語の横に青色でチェックマークがついています。こちらで、スマートフォンに聞き取ってもらう言語の設定をここで行います。今は日本語と英語が有効になっています。


日本語だけを聞き取ってもらえればいい場合は、「英語」を一度タップするとチェックマークが消えて日本語だけを聞き取るようになります。今回は日本語だけにして使用していきます。


入力方法

それでは実際にどのように使用するのか基本的な操作方法を紹介します。音声入力機能が有効になっていればどのアプリでもキーボードの右下にマイクが表示されます。今回はメモアプリで入力方法を解説します。

左側写真:まずは新規でメモ帳を開いて画面をタップします。そうするとキーボードが表示されます。画面右下にマイクのマークをタップして音声入力を行います。
右側写真:マイクをタップするとキーボードから画面が切り替わります。この状態でiPhoneに向かって話しかけます。


左側写真:音声認識中は画面下部に音声の波形のようなものが表示され、発話のそばから画面に文字に変換されていきます。
右側写真:画面下部のキーボードのマークをタップして音声入力を終わります。


左側写真:音声入力された文字に青点線で下線がでている場合は変換候補がある場合です。その部分をタップすると、
右側写真:変換候補が文章下部に吹き出しとキーボードの上部の二箇所に表示されます。どちらにも希望の変換がなければさらにキーボードの右上にある三角をタップすると、


左側写真:すべての候補が表示されます。希望のものをタップするとキーボードは元に戻ります。
右側写真:青色の破線が消えたら完成です。

破線はそのままでも構いません。また、誤って認識されて文字が入力されている場合は、消したいところにカーソルを揃えて、キーボードのバックスペースで消去することも可能です。

句読点や鉤括弧を入れたい場合はそのまま音声で「てん」や「まる」と伝えると入力してくれます。参考までによく使う記号の一覧を書き出しておきます。

記号一覧
? → はてな
! → びっくりマーク
、 → てん
。 → まる
改行→ かいぎょう
「 → かぎかっこ
」 → かぎかっことじる
( → かっこ
) → かっことじる
→ → やじるし
↑ → うえむきやじるし
← → ひだりむきやじるし
↓ → したむきやじるし

音声の入力方法は基本的にどのアプリでも一緒で、キーボード右下にマイクのボタンがあるものがほとんどです。検索ブラウザやマップではマイクの位置が違うものもあるのでここで一覧で紹介します。

Messege(メッセージ)

左側写真:音声入力用のマイクはキーボード右下にあります。こちらをタップして使用してください。
右側写真:iMessegeは音声自体を送れるボタンもあります。メッセージを入力する箱の右側のボタンをタップしたままで話しかけると、文字入力ではなく、音声がそのまま録音され、そのデータを相手に送ることができます。ボタンのマークが違うので混同はしないと思いますが、間違えて押すと録音が始まってしまうので注意しましょう。


メモ

音声入力用のマイクはキーボード右下にあります。こちらをタップして使用してください。



リマインダー

音声入力用のマイクはキーボード右下にあります。こちらをタップして使用してください。



マップ

左側写真:アプリを開いた画面から「マップで検索」をタップします。
右側写真:キーボードが画面下部に出てくるので右下のマップをタップして使用してください。


Safari(サファリ)

左側写真:アプリを開いた画面から「検索/Webサイト名を入力」をタップします。
右側写真:キーボードが画面下部に出てくるので右下のマップをタップして使用してください。


LINE(ライン)

左側写真:LINEには2つのマイクがキーボードにあります。音声入力用のマイクはキーボード右下にあります。こちらをタップして使用してください。
右側写真:「メッセージを入力」の右横にある小さいマイクは音声自体をそのまま録音して送れる機能です。タップするとキーボード画面が切り替わりマイクを押しながら話しかけると録音できます。


Google Chrome(グーグル クローム)

左側写真:Google Chromeの場合は検索窓の右横にマイクボタンがついているので、マイクをタップすると音声入力画面に切り替わります。
右側写真:この画面になったら、検索したいことを話しかけるだけで自動で検索を開始してくれます。


Google Map(グーグル マップ)

左側写真:Google Mapの場合は画面上部の検索窓の右横にマイクボタンがついているので、マイクをタップすると音声入力画面に切り替わります。
右側写真:この画面になったら、検索したいことを話しかけるだけで自動で検索を開始してくれます。


Gmail(ジーメール)

メールを入力する画面にて、音声入力用のマイクはキーボード右下にあります。こちらをタップして使用してください。


Siriとの併用

前回お伝えした「Siri」と併用すると、自分で操作せずに音声操作、入力を行ってくれます。元からiPhoneに入っていたアプリを中心に今回は紹介します。

左側写真:「Hey Siri, 学くんにメッセージを送って」と聞くと、「内容はどうしますか?」と聞かれるので内容を続けて伝えます。
右側写真:メッセージの内容をSiriが復唱して確認するのでよければ「はい」と答えると、送信されます。


送信が完了すると送信しましたと答えてこの画面が表示されました。


Siriはメッセージの読み上げもしてくれます。メッセージの送信と確認を一緒に覚えておくと便利かもしれません。

「Hey Siri, 学くんのメッセージを読み上げて」と頼むと、一番最新のメッセージを読み上げてくれます。メッセージの送信は画面がロックされたままでも使用できますが、読み上げは画面のロックを解除する必要があります。


元から入っているメモアプリなら、Siriとの連携もスムーズです。

左側写真:「Hey Siri, メモ」と言うと、「メモの内容はどうしますか?」と聞かれるので内容を答えます。
右側写真:内容を復唱され、メモに記録した旨を伝えられます。

こちらも元から入っているリマインダーアプリになります。時間を加えて伝えると、その時刻が近づいたらホーム画面にてお知らせを表示してくれるので使い勝手がよりよくなります。

左側写真:「Hey Siri, リマインダー」と言うと、「リマインダーの内容はどうしますか?」と聞かれるので内容を答えます。
右側写真:内容を復唱され、リマインダーに記録した旨を伝えられます。

学くん
学くん

おじいちゃんも大分音声入力に慣れてきたよ。キーボードの端にマイクのマークがいつもあったけど、使い方を全く知らなかったよ。

おた助
おた助

それは良かった〜!音声入力はちょっとうるさいところだったり、他の人が喋っているところだと認識が難しい場合があるから静かなところでスマホに向かってはっきりと喋ると正確に聞き取ってくれやすいよね。

おじいちゃん
おじいちゃん

おた助くんありがとう!音声入力とても良いよ。スマホの聞き取り精度が良くてね。助かってます。句読点なんかは良い忘れたりしてしまって後からキーボードで入力したりしてるが、「まる」とか「てん」と言えばちゃんと入力してくれるのは本当にすごいね。

おた助
おた助

そうですね。口頭で句読点やビックリマーク、クエスチョンって言い慣れないですよね。これも慣れかもしれませんが、文末でしたらキーボードで付け足すのは簡単ですしちょっとづつ活用していけばいいですよね。

学くん
学くん

普通にキーボードでも打ち間違いしたりするし、ちょっと変な文章でもいいでしょ。

おた助
おた助

まあ、そうだね。家族や友達との間ならフランクなやりとりが多いだろうしそんなに気にならないよね。

おじいちゃん
おじいちゃん

そうそう、固有名詞は正確に聞き取ってもらうのが難しいから、その前まで音声入試てそこからキーボード入力して、その後また文章が続くなら音声入力を続けてるよ。最初はまとめて音声入力してたんだが、あとから文章を直すのはちょっとわしには難しくてな。

おた助
おた助

それはいいですね。長押しタップして消したり入れたりするのはちょっと細かい作業で疲れますよね。どんどん自分で使いやすくしていってもらえると嬉しいです!

学くん
学くん

いろんな機能がスマホには隠されているんだな〜。

おた助
おた助

作った人たちは隠してるつもりは無いと思うけど...説明書がついているわけじゃないからこれからもどんどん新しい機能が出てくるだろうから情報を集めて勉強していかないとだね。

学くん
学くん

そうだね!またよろしく〜!

鬼頭さんから一言

鬼頭さん

おじいちゃん、音声アシスタントや音声入力を使いこなしていますね!すばらしい!
こういうのは慣れの部分が大きいので、積極的に使ってみることでどんどん自分なりの使い方ができるようになっていきますね。とても大事なことだと思います。音声入力もとても便利ですが、最近、ぼくの友人の認知症当事者は「音声読み上げ機能」を活用していると教えてくれました。彼は字を読むのがとても疲れるようになってきたということで、メールなども「読む」のではなく、読み上げ機能を使うことで音声として「聴いて」いるそうです。
今やメールやチャットなどは主要な連絡ツール。読めないから連絡やコミュニケーションを諦めるのではなく、こんな工夫でつながりや楽しみを維持できていくんですね。いっしょにやってくれる人がいる、つながり続けたい人がいるということが、モチベーションを高めていくのですね。