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日本の認知症フレンドリーコミュニティ

各地の認知症フレンドリーコミュニティの取り組みを紹介します。

vol. 4

アイステートメント 町田市(東京都)

どのようなまちが、認知症フレンドリーなのか

 認知症フレンドリーコミュニティと言っても、具体的にどのようなことを目指せばよいのか戸惑う人も少なくありません。世界中見渡しても、「こういうことをすれば、認知症フレンドリーコミュニティです」と規格が決まっているわけではなく、雲を掴むような話に思えるからです。しかし、そうした中で、それぞれのまちで、自分たちの手で、まちづくりのゴールを設定しようという草の根の動きが始まっています。東京都町田市では、2017年、認知症の人、家族、行政、市民、民間企業が一緒になって、まちだアイ・ステートメントと呼ばれるまちづくりのゴールを宣言にまとめました。
 
 まちだアイ・ステートメントが生まれたきっかけは、町田市高齢者福祉課からNPO(認知症フレンドシップクラブ)への相談でした。行政の計画では、認知症サポーター養成講座を何回実施するとか、認知症初期集中支援チームを何回派遣するといった目標は設定しているが、その先にどのような状態を目指すのかは、行政や市民活動をしている人たちの間でもきちんと議論されていない。誰もがわかりやすい成果指標ができないかという内容でした。行政の担当者や、地域で活動をする人たちと議論を重ねる中で、認知症フレンドリーコミュニティは、行政だけでなく、あらゆるセクターが関係しているので、認知症の人と家族、地域活動をする人たち、民間企業の人たちにも呼びかけて、一緒に考えていきましょう、ということになりました。

セクターを超えて、ビジョンを共有する

 ビジョンを考えるワークショップが始まったのが、2016年9月のことです。行政とNPOが呼びかけ、市内の認知症の人や家族、医療福祉関係者、民間企業、行政などの人たち50名ほどが集まりました。それぞれがイメージするまちづくりのゴールとは、というところからスタートし、立場が違っても共有できる目標をどのように表現するのか、国内外で参考になる取り組みはないか、議論は多岐に渡りました。そうした中からでてきたのが、究極のゴールを、認知症の人を主語として表現するアイ・ステートメントという考え方です。英国の認知症施策の目標設定のひとつとして、アイ(わたし)から始まる文章で表現されていたのをヒントにしています。
 

 

 ワークショップは、人数やメンバーを変えながら、回数を重ねました。試作したものは、市内の認知症に関わる団体やグループにも見てもらい、改良を重ね、翌年の3月に16の文章にまとめることができました。

まちだアイ・ステートメント

1  私は、早期に診断を受け、その後の治療や暮らしについて、主体的に考えられる。
2  私は、必要な支援の選択肢を幅広く持ち、自分に合った支援を選べる。
3  私は、望まない形で、病院・介護施設などに入れられることはない。望む場所で、尊厳と敬意をもって安らかな死を迎えることができる。
4  私は、私の言葉に耳を傾け、ともに考えてくれる医師がいる。
5  私は、家族に自分の気持ちを伝えることができ、家族に受け入れられている。
6  私の介護者は、その役割が尊重され、介護者のための適切な支援を受けている。
7  私は、素でいられる居場所と仲間を持っており、一緒の時間を楽しんだり、自分が困っていることを話せる。
8  私は、趣味や長年の習慣を続けている。
9  私は、しごとや地域の活動を通じて、やりたいことにチャレンジし、地域や社会に貢献している。
10 私は、認知症について、地域の中で自然に学ぶ機会を持っている。
11 私は、経済的な支援に関する情報を持っており、経済面で生活の見通しが立っている。
12 私は、地域や自治体に対して、自分の体験を語ったり、地域への提言をする機会がある。
13 私は、認知症であることを理由に差別や特別扱いをされない。
14 私は、行きたい場所に行くことができ、気兼ねなく、買い物や食事を楽しむことができる。
15 私は、支援が必要な時に、地域の人からさりげなく助けてもらうことができる。
16 私たちも、認知症の人にやさしいまちづくりの一員です。
 
※この文章における私とは、現在、認知症である私と、そして、これから認知症になりうる私を指します。認知症の人にやさしいまちに関する16の文章は、認知症という体験を、既にした人、これからする可能性のある人、それそれがジブンゴトとして捉えた時に、目指すべき地域・社会の姿を文章にしたものです。

目標を実現するために、それぞれができることを考える

 まちだアイ・ステートメントは、様々なセクターが、まちづくりにどのように関わるのか、アクションのきっかけづくりに役立てられています。例えば、Dカフェの開催に協力するスターバックスは、「7 私は、素でいられる居場所と仲間を持っており、一緒の時間を楽しんだり、自分が困っていることを話せる」を実現するために、空間づくり、関係づくりに貢献しています。市内のデイサービスDAYS BLG!と、ホンダの自動車販売店は、「9 私は、しごとや地域の活動を通じて、やりたいことにチャレンジし、地域や社会に貢献している」を実現するために洗車の活動をしています。
 
 通常の認知症施策のような目標設定であれば、医療福祉の関わらない民間企業は何をしてよいのか分からないところですが、認知症の人の暮らしをゴールとして表現することで、それぞれができることを考えることができます。また、行政の認知症施策や民間の活動も、定期的にこのアイ・ステートメントに基づき、振り返りを実施しています。一度決めた事業やプロジェクトを粛々と継続するのではなく、何のためにやっているのか、どのような効果があったのかを振り返っています。

 
参考文献・URL
・NPO法人認知症フレンドシップクラブ「みんながつくる認知症フレンドリーまちだ」(2018年 dfshopウェブサイト
まちだDマップウェブサイト