Column: 002

服ノ袖トンネル

君の腕は、この暗闇を抜けられるのか?

2019.08.16

認知症世界。この世界には、腕をいくら延ばしても先に進めず、距離や方向の感覚を失い、途中で引っかかり、なかなか抜けられない、「服ノ袖」という名の真っ暗なトンネルがあるのです。

一見似たように見える服でも、ボタンがたくさんついているかどうか、腕の通しやすい袖かどうかなど、着やすさはさまざま。子どもの頃は、そんなちょっとの違いだけで、ボタンを掛け違えたり、袖から頭を出そうとしてみたりして、うまく着られず、よく母に直してもらっていました。ですが、大人になってからは、服を着る難しさなんてすっかり忘れているものです。

わたしも実はそんなことすっかり忘れていたのですが、どうも最近服を上手に脱ぎ着できないのです。

服の着方を忘れてしまったのか…と思ったものですが、どうやら記憶障害とは違う症状のようです。。

まず服を着ようとハンガーにかかった服に手を伸ばしてみるものの、
うまく距離感がつかめずなかなか服がつかめません*1
一苦労して服を手に取っても、今度は服の上下左右裏表がはっきりせず、腕をどこに通したら良いのかわからない*2のです。運良く袖に手が通っても、途中で引っかかってしまったら最後、ここからどの方向に手を伸ばせばいいのかわからなくなって*3途方に暮れてしまいます。

まるで、迷路に迷い込んだときみたいに……。

さらに、あ、あそこだ!と出口を見つけても、そこを狙ってうまく手を持っていくことができません*4

何度もトライするのですが、なかなかできなくて一枚の服を着るのに1時間以上かかってしまうこともあります。なので、お出かけの時は、ずいぶん早起きをして服を着ています。

そうやって、いろんな服に毎日トライしていると、わたしにも着やすい服と苦手な服があることがわかってきました。

まず、服の形。
ある程度形がはっきりしているものがいいということがわかってきました。
薄手のカーディガンのような柔らかい素材の服はすぐにぐちゃっとなってしまい全体像が分かりづらく掴み所がないので、どこを持ち上げてどこから着たら良いのかわかりません。

ぐちゃぐちゃのときに少しでも形を把握するためには首の後ろに目印をつけることが効果的です。
そこを持ち上げると少なくとも上下は把握できるので便利です。
でも本当のことを言えば、持っている服全て、腕の先まで広げた形で、並べて置いてあると助かります。

それから素材も重要。色々着てみましたが、軽くてサラサラしているものが一番早く着られます。
肌との引っ掛かりがないから、袖の通し口さえ見つけられればスルッと着やすいのです。
ゴワゴワしているものだと、せっかく通し口を見つけても、腕が引っかかった途端に腕をどう動かせばいいのかわからなくなって混乱してしまうのです。

袖の通し口を見つけるためには通し口の内側に目印のテープを貼っておくと、服の中で迷子にならなくてオススメです。もちろん、これから着る服をサッと取り上げられるように、脱ぐときに次に着やすい状態で置いておくのもポイント。

トライ&エラーを繰り返しながら、クローゼットには着やすくて、おしゃれも楽しめる、お気に入りの服が揃ってきました。

Barrier:

「服ノ袖トンネル」に直面する背景には、
以下4つの認知症に伴う心身機能の障害が考えられます。

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Knowledge:

認知症のある方ご本人、支援者、家族、その他全ての人のこの課題解決のための知恵や世の中の障壁に関する情報を掲載します。皆さんの知恵の投稿もお待ちしております。

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世の中の障壁に関する情報を掲載します。皆さんの知恵の投稿もお待ちしております。

  1. 山田真由美さんの知恵

    2019.08.16 投稿

    袖入り口の目印に白いテープ

    山田真由美さんの知恵

    2019.08.16 投稿

    袖の通し口を見つけるために、服の内側の袖の入り口に白いテープでガイドをつけています。このテープをつけてからは、この白いテープのところに袖の通し口があると覚えておけば、テープめがけて腕を伸ばすことができ、入り口を探すのに時間がかからなくなりました。

  2. 山田真由美さんの知恵

    2019.08.16 投稿

    服を持ち上げる目印になる水色テープ

    山田真由美さんの知恵

    2019.08.16 投稿

    服がぐちゃっとなっている時に、この印があると便利です。ここをつかんで持ち上げれば、服の全体像がよくに見えて、服の前後や上下を迷わずに済み、服を着るのにいいスタートが切れます。

  3. 山田真由美さんの知恵

    2019.08.16 投稿

    軽くてさらっと着やすい服

    山田真由美さんの知恵

    2019.08.16 投稿

    シフォン生地の服やサテン生地の裏地がついている服は、入り口に手が入った途端にスルッと着られるので、とても着やすいです。

  4. 山田真由美さんの知恵

    2019.08.16 投稿

    形がはっきりとした服

    山田真由美さんの知恵

    2019.08.16 投稿

    ジャケットは形がはっきりしていて、ぐちゃぐちゃになりにくいので、服の全体像が把握しやすくて袖を間違えることが少なくなります

  5. ようこさんの知恵

    2019.08.21 投稿

    服ノ袖トンネル

    ようこさんの知恵

    2019.08.21 投稿

    「でも本当のことを言えば、持っている服全て、腕の先まで広げた形で、並べて置いてあると助かります。」

    都度セッティングしてくれる人が居れば、これが1番だと思います。
    視力障害の方もこんな風に着ている方がいらっしゃいました。

  6. とみタクさんの知恵

    2019.08.22 投稿

    泳げるけど着替えができない

    とみタクさんの知恵

    2019.08.22 投稿

    私のお客様にプールに行かれる認知症の方がいらっしゃいます。80歳代です。
    学生時代から水泳部でよく泳いでいたと伺っています。
    しかし、着替えができないのです。
    認知症といえば最近の記憶から失うと言われますが、この方にとって着替えは水泳よりも以前から毎日行われていた動作です。
    身体を動かすという点では同じなのに、水泳はできるという点はどのように説明できますでしょうか?

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