となりのおた助くん

認知症のあるおじいちゃんとの暮らしの中での「ちょっと困った」をスマホやITサービスの力を借りて解決するお助け連載。みなさんも一緒に身近なデジタルツールを活用して日々の小さな手間を減らしていきませんか。

vol. 10

おじいちゃんの頼れる相棒に?

Hey Siri,声でスマホ操作をアシスト

この連載では、認知症のあるおじいちゃんの周りでおこる日々の“ちょっとした困りごと”を、物知りおた助くんがデジタルツールを困っている人に紹介して解決していきます。デジタルツールというとなんだか馴染みが無く敬遠してしまうという人も大丈夫、あなたが毎日使っているスマホもその一つです。特別なものや知識は必要ありません。認知症のある方、また関わるご家族、支援者の方、地域の人たちの暮らしがほんの少しでも便利になるような連載を目指していきます。

今回の登場人物

  • おた助くん

    おた助くん

    学くんの同級生で、スマホ、パソコンなど最新の技術に詳しい高校生。

  • 学くん

    学くん

    なんでもチャレンジしてみる高校生。認知症のあるおじいちゃんと暮らしている。

  • 鬼頭さん

    きとうさん

    地域包括支援センターの職員。「認知症フレンドリー」な社会を目指して、認知症のある方やご家族とともに活動をしている。認知症のある方の暮らしや制度に詳しい専門職。

学くん
学くん

はぁ〜雨が多くてやる気がでないな。

おた助
おた助

学くん、なにしてるの?

学くん
学くん

ただスマホ見ていただけだよー。あっスマホといえば!おじいちゃんが最近スマホを活用しすぎて目が霞むってボヤいていてさ。こればっかりはおた助くんに相談してもしょうがないんだけど....

おた助
おた助

え!そんなにおじいちゃんスマホを活用してくれているんだ!

学くん
学くん

そうなんだよー。おた助くんのおかげもあってすっかりね。

おた助
おた助

そうだ!それならSiri(シリ)を使うのはどうかな?音声でスマートフォンを操作出来る仕組みなんだ。おじいちゃんはiPhone(アイフォン)を使っているからこの機能は使えると思うんだ。

学くん
学くん

それ聞いたことある!たしか話しかけて会話も出来るんだよね。普通に話しかけるだけでいいの?

おた助
おた助

そうそう。人間と同じような受け答えをしてくれてスマートフォンの操作を手伝ってくれる機能だよ。全く人間と同じように会話とはいかないけど、Siriが聞き取りやすいように工夫すれば色んな使い方が出来ると思うんだ。

学くん
学くん

それはいいかも。画面を見なくてもちょっとした用事を音声で済ませてくれたらまた活用方法が広がるね。小さい画面を見るのが辛い人にはいいし、手が離せない時なんかもいいかも。

おた助
おた助

そうだね。シンプルなことなら結構答えてくれるし、これからどんどん進化してもっと色んなことが出来るようになるから使い方を覚えておくといいかも!Siriを使ってスマホが苦手な人にも活用してもらえたら嬉しいな。

Siri(シリ)とは

iPhoneなどApple社製品に搭載されている話しかけるだけで機器の操作をしてくれる音声アシスタント機能です。「Hey Siri(ヘイシリ)」と呼びかけ話しかけるだけで、操作を手伝ってくれるので手が離せない場合などに便利です。また、わざわざ人に聞くまでも無いことなどや、日々気になったとこを聞き、コミュニケーションを取ることも出来ます。Siriが音声を聞き取りやすいように、はっきりとした発話と標準的な言語で話しかけるとよりスムーズにコミュニケーションが取れます。


参考

Apple公式 Siriのページ

Siriの起動方法

今回もiPhoneで説明していきます。まずはSiriの起動方法からです。Siriはスマートフォンに向かって「Hey Siri (ヘイ シリ)」と呼びかけるだけで反応します。

「Hey Siri (ヘイ シリ)」と呼びかけた時のiPhoneの画面。画面下部にくるくると動く球体のようなものが表示されます。これがでればSiriが動作しています。「Hey Siri」と呼びかけた後に聞きたいことやお願いしたいことを続けて話すと答えてくれます。


反応しない時は、iPhoneの設定が有効になっていないことが考えられます。設定から以下が有効になっているか確認しましょう。

左側写真:ホーム画面の設定アプリをタップして開きます。下部へスクロールして「Siriと検索」をタップします。
右側写真:画面上部にある「“Hey Siri”を聞き取る」「ロック中にSiriを許可」 の横にあるボタンをタップします。緑色に変われば設定が有効になっています。

iPhoneが置かれている状態を確認してみましょう。画面がなにか物で覆われていたり、画面を伏せているとSiriは反応しません。そういった状態でも反応してほしい時は設定を変更することで、起動させることができるようになります。

左側写真:ホーム画面の設定アプリをタップして開きます。下部へスクロールして「アクセシビリティ」をタップします。
右側写真:下の方までスクロールして「Siri」をタップします。


画面下部にある「"Hey Siri "を常に聞き取る」の横にあるボタンをタップします。緑色に変われば設定が有効になっています。これで画面が下向きになっていたり覆われていてもSiriが反応してくれるようになります。

これでも反応してくれない場合は、反応していたがスピーカーの音量が小さくて聞こえていなかったや、iphoneがネットワークが接続されていない、機能制限されているなど考えられます。どうしてもわからない場合は周りの人に聞いたり、Appleサポートへの問い合わせをしてみてください。

Siriは音声での対応をしてくれますが、会話の内容を画面に表示させることが出来ます。こちらの音声を正確に聞き取ってくれているか確認にもなるので表示を有効にしておくといいでしょう。

左側写真:ホーム画面の設定アプリをタップして開きます。下部へスクロールして「Siriと検索」をタップします。
右側写真:画面中部にある「Siriの応答」をタップします。


下部の「Siriキャプションを常に表示」「話した内容を常に表示」の横のボタンが緑色になっていれば有効です。もしオンになってない(緑色になっていない)場合は、Siriが話した内容と自分が話した内容は画面上には表示されず、音声のみでのやりとりになります。


Siriに聞いてみよう

ふと「今日は何日だろう」、「あれ今何時だっけ」、「今って令和何年?」など思った時にSiriに気軽に質問してみましょう。人に聞いたりカレンダーを見たりするより気楽に確認できます。

左側写真:「Hey Siri, 今日は何日?」
右側写真:「Hey Siri, 今何時?」
音声でも返答してくれますが、画面下部にテキストでも表示してくれます。


左側写真:「Hey Siri, 今は何年?」
右側写真:「Hey Siri, 今は令和何年?」
「和暦は何年?」と聞くと、「わかりません」と返事があったので和暦を聞きたい場合は令和や以前の年号で聞くとスムーズに答えてくれそうです。

Siriは位置情報を使って今いる場所の天気予報も教えてくれます。地名を加えて聞けばその地点の予報も教えてくれるので出かけるまえの慌ただしい時にちょっと聞くのも良さそうです。

左側写真:「Hey Siri, 今日の天気は?」
右側写真:「Hey Siri, 今日の千代田区の天気は?」
地名を入れて聞く時は、市区町村までが良さそうです。それより小さい単位の地名ですとSiriが認識出来ない可能性が高そうです。「今の天気は」、「明日の天気は」など色々な聞き方ができます。また、気温を聞いても答えてくれます。

ふと手元にiPhoneが無い時、部屋にはあるはずなんだけど見当たらない。そんな時はSiriにどこにいるか話しかけてみてください。返事をしてくれるので居場所がわかるはずです。

左側写真:「Hey Siri, どこにいるの?」
右側写真:「Hey Siri, 音楽をかけて」
どこにいるのか聞いてもすぐに見つけ出せない場合は、音楽をかけてもらって音を出し続けてもらうと探しやすくなります。マナーモードにしていても Siriは反応してくれますが、音量を小さく設定しているとSiriの声や音楽が聞こえないかもしれません。なので、音量を調節しておくといいでしょう。

Siriに操作してもらおう

スマホを開かずにアラームをセット出来るので、就寝時に明るい光を見なくてもすみますね。

左側写真:「Hey Siri, 明日の朝6時に起こして」
右側写真:「Hey Siri, 明日の6時に目覚まし」
「目覚まし」や「起こして」などのキーワードを入れて話しかけるとSiriは時計アプリのアラームをセットしてくれます。もちろん「アラームをして」と言っても同じようにセットしてくれます。また、「Hey Siri, 1時間後に起こして」などの表現でもアラームをセットしてくれます。ぜひ、vol. 5 おじいちゃんお薬の時間だよ〜!の回と一緒に活用してみてください。

料理の時間を計る時、手が離せない時などにも大活躍するこの機能。

左側写真:「Hey Siri, 3分後にタイマーかけて」
右側写真:「Hey Siri, 1時間後にタイマーかけて」
こちらも時計アプリのタイマーを使って時間を計ってくれます。

あのアプリどこにいったのかな...沢山あるアプリの中から目的のものを探し出せない時はSiriにお願いして起動してもらいましょう。

「Hey Siri, ウェザーニュースを起動して」
Siriにアプリの名前と起動してもしくは立ち上げてなどと伝えるとすぐにアプリを開いてくれます。画面がロック中だと、Siriから「まずロックを解除してください」と伝えられるのでそれぞれの方法で解除してもらうとアプリの画面に移動します。使用中だとそのままアプリを立ち上げてくれます。


電話帳に登録されている宛名を言えば電話もかけてくれるSiri。名字や下の名前だけでも反応してくれますが、同じ名前の人が複数登録されているとどの人にかけるか聞かれるので注意してください。

「Hey Siri, 学くんに電話をかけて」
フルネームで呼びかけても、君やさんなどをつけても反応してくれます。


電話帳に登録されている宛名を言えば電話もかけてくれるSiriですが、続柄でも電話をかけてくれます。ただ最初に、だれがお父さんなのか、だれがお母さんなのかを、Siriに覚えてもらう必要があります。何度がSiriとやり取りして普段の呼び名でSiriに電話してもらえるようにしましょう。
今回は「お母さん」に電話してもらえるように設定していきます。

左側写真:「Hey Siri, お母さんに電話して」 というと、Siriが「あなたのお母さんのお名前は何ですか?」と聞かれるので、お母さんのフルネームを口頭で答えます。
右側写真:Siri「〇〇〇〇さんをあなたのお母さんとして登録しますね?」と聞かれるので画面上の「はい」をタップします。


SiriからSiriから「山田花子さんをあなたのお母さんだと覚えておきます。ご指定の連絡先に電話をかけています。」と言われます。これでSiriにお母さんが誰かを覚えてもらうことができました。そして、そのまま電話をかけてくれます。


お母さんだけでなく、「母さん、」「母ちゃん」「お袋」「ママ」などでも同じ番号に電話をかけてくれるので、いつも呼んでる呼び方でぜひSiriに頼んでみてください。

左側写真:「Hey Siri, 母さんに電話をかけて」
右側写真:「Hey Siri, ママに電話をかけて」
どういう呼び名で呼べばSiriが反応してくれるのか色々と試してみるとまた使い方の幅が広がりそうです。

Siriに話しかけてみよう

Siriは雑談も可能です。いろんな質問をしてみてください。Siriと会話を続ける時は画面下部の光る球体をタップすると話を聞き取ってくれます。こちらの会話を聞き取ろうとしてくれてる時は球体が大きくなります。

左側写真:「Hey Siri, Siriはいつも何時に寝るの?」
右側写真:「Hey Siri, 面白い話をきかせて」
ちょっと気になることをSiriに質問してみたら、意外と素っ気ない時も。


左側写真:「Hey Siri, 歌を歌って」というと謙遜するので
右側写真:「歌えるでしょ」と言うと...
歌は苦手なようです。あなたのiPhoneのSiriはどんな反応をしてくれるでしょうか。


左側写真:「Hey Siri, しりとりしよう」
右側写真:「Hey Siri, あなたの誕生日はいつ?」


左側写真:「Hey Siri, 落語を聞かせて」
右側写真:「Hey Siri, 俳句を詠んで」
落語はなんとしっかりと返事をしてくれました!俳句も詠んでくれました。


「Hey Siri, 短歌を詠んで」
Siriへの問いかけは無限にあります。また、「応援して」や「励まして」なども聞いてみると色んなパターンで反応してくれます。どんどん質問してSiriと仲良くなってみてください。


学くん
学くん

Siriへの話しかけ方色々あって面白いね。おた助くんに紹介された通りでなくても意外と理解してくれて、次は言い方換えてみようとか色々こちらも試行錯誤して楽しいよ。

おた助
おた助

それは良かった!確かに、Siriは理解出来ないときはわからないって言ってくれるからじゃあ次はSiriにわかるようにどう言えばいいか考えるのも面白いよね。

学くん
学くん

そうそう。意外と会話をしようと思ってどうでもいいことを聞くと冷たかったりして、何だよ〜!ってなるけど。おじいちゃんも楽しいみたいで、教えて貰った以外にも自分でどんどん色んな質問をSiriにして挑戦してるみたい。部屋から楽しそうな声が聞こえるよ。

おた助
おた助

そうなんだね。スマートフォン使い慣れてない人はSiriでの操作と合わせて使っていったら幅が広がりそうだね。Siriの気まぐれはご愛嬌ってことで、何度もトライしてこちら側も慣れていかないとね。

学くん
学くん

うん、おじいちゃんの友だちで、スマホを自分の指で操作するのが難しい人もいるみたいなんだ。でも、Siriを紹介したら会話に近い形でいろいろとできるのが楽しいみたい。

おた助
おた助

そういう方が身近なテクノロジーを活用して生活がちょっとでも楽しくなっているっていう話を聞けると嬉しいな。きっと操作を覚えるのに大変なこともあっただろうけど、とても前向きで刺激をもらうよね。

学くん
学くん

本当だね。僕も頑張らなきゃ。そうそう、iPhoneだとSiriだけど、他のスマートフォンでも音声アシスタント機能はあるし、最近はスマートスピーカーで同じような機能が使えるから使ってみると楽しそうだね。

おた助
おた助

そうだね。話しているうちに愛着が湧くだろうから、それでスマートフォンを使うことを敬遠していた人が活用してくれるようになった良いな。

鬼頭さんから一言

鬼頭さん

音声認識の精度の向上やスマートスピーカーの普及もあり、音声アシスタント機能を利用している人も増えているのではないかと思います。とても便利な機能ですが、単に便利というわけではありません。
ぼくの知っている認知症当事者は、空間認識の課題からスマホのフリック操作が苦手になりました。でも、担当のリハビリ専門職といっしょに音声入力の練習をすることで、電話やメールを簡単にできるようになりました。さらに、毎朝「今日の予定は?」とスマホにたずねることで予定もわかるようにしています。以前は都度家族にたずねていたようですが、何度もきくと嫌な顔をされたそうです。「スマホは何度たずねても怒らない」と笑っています。
嫌な顔をしてしまう家族を責めているのではなく、スマホの方が得意なこともあるということです。スマホで間に合うことはスマホにまかせて、”家族だからできる”ということに時間を使えたらいいですよね。