ピックアップ最新研究

認知症に関する国内外の最新研究の中から、「認知症とともによりよく生きる社会」を構築するために役立つ論文をピックアップしていきます。

vol. 5

2019年1-3月発表論文

今回より、テーマは絞らず発表時期を限定してご紹介していきます。今回は、2019年1-3月に発表された最新研究を12本選出しました。アブストラクトの掲載がない場合や、実際に本文をご覧になりたい場合は、国会図書館で所蔵しています。国会図書館所蔵の学界誌は該当箇所を指定し複写、郵送で取得することが可能ですので、ご興味がある方はぜひご活用ください。(詳細は国会図書館ウェブページへ)。

01

認知症高齢者グループホームにおける「その人らしさを尊重したケア」 の実態と影響要因

弘前医学

中川 孝子、藤田 あけみ、西沢 義子

【アブストラクト】
本研究の目的は,「認知症高齢者のその人らしさを尊重したケア」に関する認識と実践の実態とその影響要因を明らかにすることである.全国329か所のグループホームのうち研究同意の得られた32施設のケア提供者250名を対象に先行研究で得られたその人らしさを尊重したケアを示す14項目についての認識と実施に関する質問紙調査を行った.その結果,「その人らしさを尊重したケア」14項目とも十分認識されていたが,実施は有意に低かった.「その人らしさを尊重したケア」14項目に影響する要因は,僅かではあるが,認知症ケア経験年数が14項目中4 項目に影響し,研修回数が1 項目に影響していた.
 
This study aimed to examine the actual state of awareness regarding care that respects individualityfor elderly persons with dementia, as well as its implementation and influencing factors. The subjects were 250 careproviders from 32 facilities who were recruited from the 329 group homes across Japan and consented to participatein this study. The subjects completed questionnaire surveys with 14 items that, according to a previous study,indicate care that respects individuality. The results revealed that while there is ample awareness for all 14 surveyitems regarding care that respects individuality, its implementation was significantly low. It appears to be that yearsof experience with dementia care influences four of 14 survey items and numbers of training times influences one of14 survey items.

外部リンク
02

認知症家族介護者の自己成長プロセスに関する一考察 (その1)

帯広大谷短期大学紀要

小林 聖恵

【アブストラクト】
O町では認知症家族介護者の心の拠り所として,認知症介護家族交流会や認知症カフェが開催されている。参加する家族からは介護に対するさまざまな思いが語られているが,筆者がこれらの会に参加し気がついたことは,回を重ねるごとに介護に対しての負担から生まれる否定的な思いから,介護を通して得た達成感,充実感へ向かい始めていく家族の語りの変化であった。そこで認知症家族介護者が介護を通して自己成長していくプロセスの実態と,そこに至るまでに必要な支援を検討するため,認知症の人を介護する家族に半構造化面接を行った。結果,介護の状況はさまざまであっても,第1段階[驚愕・戸惑い・否定]第2段階[混乱・怒り・拒絶・抑うつ]第3段階[あきらめ・開き直り・適応]第4段階[理解]第5段階[受容]を辿るとされている認知症の家族の心理プロセスと類似することが明らかとなった。また,認知症の状況により,第2段階,第3段階を行きつ戻りつする家族の苦悩の軽減,第5段階の受容から,さらに自己実現へと進むため,認め合い,理解し合える仲間との出会いの場となる認知症介護家族交流会や認知症カフェの存在が,認知症家族介護者の自己成長プロセスで大きな役割を持つということが示唆された。

外部リンク
03

急性期循環器病院での認知症ケアチームの取り組み

日本老年医学会雑誌

内藤 喜隆、横谷 弘子、姫野 麻菜美、石口 祥夫、森田 孝子、大久保 優、玉木 俊治、池田 知聖、清水 一紀

【アブストラクト】
目的:認知症ケアサポートチームの活動を振り返り,活動の報告と今後の課題について検討する.
 
対象・方法:2017年1月1日~12月31日でD-castに依頼がきた350名を対象とした.チーム介入時と介入終了時に認知症認定看護師が認知症高齢者の日常生活自立度評価を施行し介入前後での変化とチーム介入までの日数,チーム依頼の内容,在院日数を検討した.
 
結果:対象者の年齢では高齢者(81±9歳)の依頼が多く,疾患別では心不全94名(27%),外科カテーテル治療45名(13%)の依頼が多かった.依頼目的は認知症の中核症状が40%,せん妄発症と予防が36%,その他24%であった.認知症高齢者の日常生活自立度の介入前後では改善が29名(16%),維持が165名(66%),低下は46名(18%)であった.低下患者の介入時評価は該当なしが26名(57%),Iが12名(26%),IIaが1名(2%),IIbが5名(11%),IIIaが2名(4%)であった.チーム介入までの日数は該当なし,I,IIと比較的軽度の症状の患者の方が,IIIの患者と比べてチーム介入が遅延し,在院日数も長かった.
 
結論:高齢・認知症患者はせん妄,中核症状の増悪が病棟対応に影響する事が多かった.軽度認知症患者ではチーム介入が遅延し,在院日数が長くなる傾向があるため,今後は入院早期に軽度認知症患者を評価できる取り組みと対策が重要.

外部リンク
04

若年性認知症の人に対する作業療法実践に関する文献レビュー

作業療法の実践と科学

横山 和樹、宮嶋 涼、森林 美惠子、平野 憲子、池田 望

【アブストラクト】
若年性認知症の人に対する作業療法の実践を明らかにするために文献レビューを行った.文献検索の結果,12編の事例検討(事例数25)が分析対象となった.作業療法の実施形態・就労状況・対象・評価・介入・結果を整理すると,若年性認知症の人に対する作業療法は通所介護や地域活動の中で多く報告され,生活圏拡大活動,日常生活活動,家族に対する相談・指導・調整,社会貢献活動が用いられていることが明らかになった.作業療法の結果としては,社会的役割の獲得・遂行,ニーズに合ったサービスの利用,対人関係の促進等が示された.作業療法は,本人の能力や強みを生かし,社会参加や社会的役割につなげることに寄与できる可能性があった.

外部リンク
05

在宅認知症者の介護者がうつ状態に至る要因における性差

日本看護研究学会雑誌

齋藤 嘉宏、鳩野 洋子

【アブストラクト】
目的:本研究ではPearlinの「認知症介護ストレスモデル」に基づいた概念モデルを作成し,在宅認知症者の介護者がうつ状態に至る要因を明らかにすることを目的とした。
 
方法・結果:質問紙調査を行い,男性103名,女性124名を分析対象とした。介護者の64.8%にうつ状態がみられたが,性差はみられなかった。介護負担感,自己効力感,自尊感情の得点も性差はなかった。介護者の背景要因の因子分析を行い,抽出した因子をモデルに投入して性差による多母集団同時分析を実施し,良好な適合度を得た。介護者は,背景要因が最もうつ状態に影響していた。男性介護者は,介護負担感,自己効力感のパス係数が女性と比較して大きかったが,女性介護者は自尊感情が大きかった。
 
結論:介護者の背景要因に加え,男性介護者では自己効力感,女性では自尊感情の維持に働きかけることが,うつ状態の予防において重要な要因となることが考えられた。

外部リンク
06

救急医療現場での認知症患者の急増

日本老年医学会雑誌

田所 功、佐々木 諒、涌谷 陽介、高尾 芳樹、竹中 龍太、藤木 茂篤、阿部 康二

【アブストラクト】
認知症患者数は年々増加しており,それに伴い認知症患者の救急外来受診も増加していると推定される.加齢による生理的変化や認知機能障害の影響のため,救急外来での認知症患者の診療はしばしば困難を伴うことから医療現場の負担増加につながっている.さらに認知症患者の入院はせん妄等の合併症をきたしやすく,また入院することにより認知機能が増悪し得ると考えられている.筆者らが関連施設で行った検討では,2次救急病院においては救急外来受診者の15.4%が認知症患者で,そのうち54.9%が入院を要し,平均入院期間は33.4±1.0日であった.一方3次救急病院では認知症患者は3.3%と比較的低率であったが,入院率は75.8%とより高率であった.施設の性質によりこのような違いはあるものの,認知症患者の救急受診,緊急入院の増加や,入院の長期化は,あらゆる医療機関において今後ますます重大な問題となることが予想される.これらの問題の解決のためには,外来対応可能な状態での入院や,介護サービス・入所施設の調整などに起因する入院期間の長期化を抑制することが有効であると考えられる.認知症患者における外来診療の適正化に加え,新オレンジプランに示されるような医療機関・介護間での連携,地域全体での認知症ケア,介護者への支援等の充実による認知症患者・介護者のケアを向上が望まれる.訪問診療は受診が困難な認知症患者の身体合併症の予防,早期発見に有用であるが,限られた医療資源にあっては近年発展している通信デバイスを用いた遠隔診療(telemedicine)を組み合わせることが今後の認知症患者の診療において重要と考える.

外部リンク
07

役割が付与された地域住民ならびに民生委員における認知症が疑われる高齢者を発見した際の相談先の選択の意向

川崎医療福祉学会誌

中尾 竜二

【アブストラクト】
本研究は,役割を付与された地域住民ならびに民生委員を対象に認知症の疑われる高齢者を発見した場合の相談先の意向を明らかにすることを目的とした.調査対象者は A 市,B 市,C町,D市の人口・高齢化率の異なる4市町村の地区社会福祉協議会(支部社会福祉協議会),認知症キャラバンメイト,小地域ケア会議に所属する地域住民2,503名とした.調査内容は,回答者の属性,認知症の疑われる高齢者を発見した場合の相談先の意向などで構成した.相談先の意向の遠近構造は,クラスター分析を用いて類型化し,コンボイモデルを用いて模式化した.その結果,役割を付与された地域住民ならびに民生委員ともに3つのクラスターが抽出された.役割を付与された地域住民は,「民生委員」を相談先とする意向が高かった.また,民生委員は「地域包括支援センター」,「認知症が疑われる高齢者の同居家族」,「認知症が疑われる高齢者の別居家族」へ相談する比率が有意に高かった.本研究結果より,地域において潜在する認知症が疑われる高齢者を早期に発見するため,援助要請する重要な存在としての地域コミュニティ(地域で一定の役割を付与されている住民と民生委員)による認知症の早期発見・早期受診を可能とする受診・受療連携システムの構築のためには,それぞれの役割を明確にし分担していくことも重要であると考えられた.今後は地域包括ケアシステムをふまえた受診・受療における両者の相談先の順序性を明らかにすることが課題である.

外部リンク
08

Using urban woodlands and forests as places for improving the mental well-being of people with dementia

Leisure Studies

Mandy Cook

【アブストラクト】
This study investigates the meaning and use of urban woodlands and forests, and how they can contribute to positive mental well-being of people with dementia, by adopting ethnographic, participatory action research and case study approaches. Qualitative research provided knowledge and understanding about how activities in an urban woodland environment can add value to and benefit the lives of people with dementia living independently. Data were collected from semi-structured, and walk-along interviews, as well as from piloting a programme of activities based in an urban woodland setting . Five male participants with dementia, aged between 52 and 83, and one family carer, took part in the pilot programme, based in Scotland (UK). The findings show how through active use of urban woodlands and forests, people with dementia find their experiences to be meaningful. People with dementia found meaning in the multi-sensory experience of the woodland, in their feeling of self-worth, and in their ability to retain a sense of autonomy and identity. The approach to active use of urban woodlands and forests offers a viable alternative to traditional residential and day care activities, as well as an opportunity to promote the quality of life of people with dementia living in their own homes.

外部リンク
09

Stronger together: learning from an interdisciplinary dementia, arts and well-being network (DA&WN)

Arts & Health

Victoria Tischler,Justine Schneider,Christian Morgner,Paul Crawford,Tom Dening,DAWN Brooker,Claire Garabedian,Tanya Myers,Fergus Early,Nicola Shaughnessy,Anthea Innes,Kate Duncan,Arti Prashar,Orii McDermott,Richard Coaten,Derek Eland &Kevin Harvey

【アブストラクト】
Background
This paper reports on the learning from a 12-month interdisciplinary project (Dementia, Arts and Wellbeing Network– DA&WN) and its activities. These featured a series of four workshops on dance, visual art, theatre and music. The network was comprised of clinicians, academics, creative practitioners and people with lived experience of dementia and their carers.
 
Methods
The workshops were designed to draw out tacit knowledge about well-being in dementia through an action-based learning and research approach. This included, guided activities combined with reflective group discussions, visual documentation and baseline and follow-up questionnaires.
 
Results
Outcomes included new collaborations between group members, changes in creative practice for artists, and active and sustained involvement of people living with dementia and their carers in similar opportunities and participatory research.
 
Conclusion
This participatory and inclusive workshop model should be considered to develop and enhance interdisciplinary activities in dementia care.

外部リンク
10

Designing for playfulness through compassion: design for advanced dementia

Design for Health

Cathy Treadawa, Jac Fennell, Aidan Taylor & Gail Kenning

【アブストラクト】
Those who have the greatest need for excellent design are often the most vulnerable in society. These people may find it difficult or impossible to articulate their design requirements due to physical, sensory or memory impairment as a result of accident or disease. Finding ways to understand the challenges they face moment-by-moment and day-by-day is vital. Empathic and compassionate approaches that place an individual central to the design process can inform outcomes that significantly benefit the user as well as those that care for them.

This paper presents research that aims to support the wellbeing of people living with advanced dementia by designing to promote pleasure and positive emotion. The LAUGH project is a recently completed international three-year UK AHRC funded design research project. Outputs from the study include a collection of playful objects, designed to provide comfort, pleasure and fun. This paper describes the research process underpinning the development of the designs and the Compassionate Design methodology that has informed the work.
 
The design narratives behind the playful objects will be explained in relation to the three key themes of Compassionate Design, which stress the importance of personalization, sensory stimulation and maintaining connections between people and the world.

外部リンク
11

The origin of dementia friendly theatre performances and the role of people living with dementia as creative consultants

Research in Drama Education: The Journal of Applied Theatre and Performance

Nicky Taylor

【アブストラクト】
A reflection on the process that led to the development of dementia friendly theatre performances at Leeds Playhouse (formerly West Yorkshire Playhouse) including the vital involvement of people living with dementia as creative consultants. This article outlines the inspiration behind such performances, the steps required to make the necessary adaptations and enhancements identified by people living with dementia, and the potential for theatres to value and validate the voices of people with dementia through continued cultural engagement.

外部リンク
12

Quality of life or ‘quality moments of life’: considering the impact of relational clowning for people living with dementia

Research in Drama Education: The Journal of Applied Theatre and Performance

Julie Dunn,Michael Balfour &Wendy Moyle

【アブストラクト】
This paper reports on a mixed methods project entitled Playful Engagement aimed at improving the quality of life (QoL) of individuals living with dementia through engagement with two relational clowns. Analysis of the quantitative data was unable to identify QoL improvements, whilst the qualitative data revealed positive affective outcomes within individual visits. In light of these outcomes, literature focused on the perceptions of QoL by individuals living with dementia was employed to generate an alternate reading. This alternate reading suggests that while the visits may not have improved the participants’ overall quality of life, they nevertheless generated ‘quality moments of life’ characterised by connectedness, relationships, agency and happiness.

外部リンク