働く千絵さんの低空飛行

都内に暮らす千絵さんは55歳。2020年秋に軽度認知障害(MCI)と診断された後、あるオフィスに就職します。同僚は千絵さんのMCIを知りません。さあ、離陸です。「あれ、何階に行けばいい?」「あの人は誰?」。次々と航路に現れる「障害物」。果たして千絵さん号のフライトは…

vol. 9

スマートフォンは外付けの脳

みなさん、予定の管理はどうしていますか?私はもっぱらスマートフォンのカレンダーアプリを活用しています。自動的にクラウドデータに同期されるし、予定の30分前など設定に応じて、お知らせ機能があって便利です。たくさん書き込めるので、以前は「ミーティング」としか書かなかった会議の予定も、会議招集のメール本文をそのままメモ欄に貼ってしまいます。こうしておくと、メールアプリに移動しなくても参加者や議題を確認できるので、メールを探している間に、そもそも予定確認をしていたとこと自体が意識から飛んでしまう…といったことを防げます。プライベートも同様で、たとえば通院予定には診察内容や医師に聞きたいことも一緒に書きこみます。アドレス帳では、以前は空欄のままだった友人のメールアドレス、勤務先などの欄を、しっかり埋めるようになりました。
 
音声入力も便利なので、お薦めします。たとえば電話をしながらメモを書きとったり、携帯で文字を入力したりしていると、「ん?」と字の確認に気を取られて作業が止まってしまうことが増えました。そうなると、書きたかったことを忘れてしまったりもします。そこで音声入力。「文字でひっかかるんだったら、しゃべっちゃえ!」ということで、頭に浮かんだことをまずは一通り、スマートフォンに向かって話します。ひと段落したところで、入力された文字列を読み返し、変換ミスなどを直していくようにしています。
 
 

超多忙だった過去の経験を生かして

もともとはアナログ派で、デジタルより紙を重宝していた私ですが、以前の仕事で採用面接や会議が立て込み、ノートパソコン片手に会議室から会議室へと飛びまわっていた時期がありました。面接や会議の内容はきちんと記録しなければいけないし、合間に重要なメールが届けばすぐ返信する必要があるし、スケジュールや重要なデータの効率的な管理方法を真剣に考えました。このときに編み出した技を、少しスローペースになった今の仕事にも活かせています。
 
以前ご紹介した、Excelをつかった自分データベースもその一つですし、メールのテンプレート作成もその頃に始めた「技」です。たとえば、受けた電話に関する部内での情報共有、経費精算のための経理部門とのやり取り、採用面接に関する面接官への連絡など、転職するたびに、そこでの業務内容に合わせたテンプレートを新しくつくることが習慣になっています。これがあれば日々のメールに費やす時間を短縮できるはず、なのですが、せっかくテンプレートを作っても、毎回違う文面を書くことになり、活用できない職場もあります。残念ながら、今の職場はその「例外」ばかりです(苦笑)。
 
メールに関しては、私の場合は、気を付けなければいけないこともあります。ここで働き始めてから、同じメールを見ているはずなのに、同僚の言うことと私の理解がくい違うことが何回かあり、どうやら私はメールを途中までしか読んでいないらしいと気づきました。それ以降は、メールを最後まで見る、熟読が難しいときも少なくとも最後までスクロールして確認することを、自分に課すルールとして追加しました。