認知症+DESIGN 認知症のためにデザインは何が可能か

デザイン理論研究・国内外のデザイン事例分析・フィールドワークを通じて、認知症の方々が暮らしやすい社会の実現のためにデザインが果たすべき役割を考えます。

認知症のためにデザインは何が可能か。

 震災、自殺、児童虐待、子育て、まちづくり….

 認知症未来共創ハブの構成団体の一つであるissue+design(特定非営利活動法人イシュープラスデザイン)では、日本が抱える様々な社会課題に対して、デザインの力で解決に挑むプロジェクトを多数行ってきました。

 そんな私達にとって、「認知症」というテーマは長年取り組みたい、取り組むべきと考えていた最重要イシューの一つです。

 デザインとは人の「認知機能」へのアプローチそのものであり、優れたデザインは人の認知機能を補い、支え、高める役割を果たすものであるためです。

連載の趣旨・目的

 この連載は、認知症のある方の生活課題の解決、人生の喜びの実現に向けて、デザインができること、デザインの可能性を追求することを目的としています。

 デザインの可能性を追求するにあたって、3人のデザイナー・リサーチャーとともに、3種類のリサーチを実施し、その結果をレポートしていきます。

 1つ目は、デザイン理論の歴史の振り返りです(研究編)。高齢者、障害者、マイノリティの方との「共生」は長年デザインのテーマであり、数多くの理論が蓄積されています。その理論の変遷を振り返り、ポイントを整理します。ヨーロッパの研究機関における認知症デザインの最新理論も紹介する予定です。これらを通じて、「認知症」のためのデザインを考える理論的バックボーンを地固めします。こちらは、名古屋芸術大学芸術学部准教授であり、デザイン研究者の水内智英が担当します。

 2つ目は、海外を中心としたデザイン事例のケーススタディです(ケーススタディ編)。イギリス、オランダ、ドイツ、オーストラリアなどの欧米各国では、認知症のためのデザイン専門機関が存在する国もあるなど、認知症の方のためのデザインの実践が進んでいます。既に世の中に出ている商品・サービス・空間などを通じて、認知症のある方向けのデザイン開発の実践知をまとめます。こちらは、デザイン会社・cocoroé代表であり、アートディレクターの田中美帆が担当します。

 3つ目は、日本社会のフィールドワークです(フィールドワーク編)。認知症のある方を含めた日本人の生活現場を調査、記録、考察することで、デザイン対象となる商品・サービス・空間の現在を把握します。こちらは、issue+designのデザインリサーチャーである稲垣美帆が担当します。

 また、この3種類のリサーチに加えて、認知症未来共創ハブで実施中の当事者インタビューの分析結果も活用し、認知症のある方のためのデザインを多面的に論じ、その可能性や実践的な方法論を提案することを目指します。

第1号は「研究編①共生のためのデザイン史」

 第1号は研究編からスタートします。高齢者、障害者、マイノリティの方などとの「共生」のためのデザインの歴史を振り返り、「認知症とともにより良く生きる未来」に向けたデザインを実現するためのポイントを先人の知恵から探ります。

執筆者プロフィール

筧 裕介 リサーチ統括・全体構成・編集担当

issue+design 代表

慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科 特任教授

一橋大学社会学部卒業。東京大学大学院工学系研究科修了(工学博士)。

2008年issue+design 設立。以降、社会課題解決、地域活性化のためのデザイン領域の研究、実践に取り組む。著書に『持続可能な地域のつくり方』『ソーシャルデザイン実践ガイド』『震災のためにデザインは何が可能か』など。代表プロジェクトに、震災ボランティア支援の「できますゼッケン」、育児支援の「親子健康手帳」、300人の地域住民と一緒に描く未来ビジョン「みんなでつくる総合計画」など。

グッドデザイン賞、日本計画行政学会・学会奨励賞、カンヌライオンズ(仏)、D&AD(英)他受賞多数。

水内 智英 デザイン理論・歴史研究担当

名古屋芸術大学芸術学部デザイン領域准教授

専門はデザイン理論、ソーシャルデザイン。

武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科で基礎デザイン学を、ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ大学院 Design Futures でメタデザインを学ぶ。

英日のクリエイティブエージェンシー勤務を経て、2011年より現職。名古屋芸術大学デザイン領域ライフスタイルデザインコースにおいて総合的な視点からデザイン教育を実践する他、同大の基礎教育プログラムを統括する。同時に、ソーシャルデザインに関する研究活動や実践的プロジェクトを行う。基礎デザイン学会会員、日本デザイン学会会員。

田中 美帆 ケーススタディ担当

cocoroé代表/多摩美術大学 ソーシャルデザイン論 講師

多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。(公財)江副記念財団リクルートスカラシップ生としてRoyal College of Artにて修士号取得。

2010年(株)cocoroé設立。「mother juice(グッドデザイン賞受賞 2016年)」「みんなで、たまには自転車交通安全の未来を語り合ってもいいんじゃないか会議(2018年)」のアートディレクションや、「びゅー VIEW ビュー 展(2018年)」総合プロデュースを手掛ける。日本グラフィックデザイナー協会 会員。

稲垣 美帆 フィールドワーク担当

issue+design デザイナー

名古屋芸術大学デザイン学科ライフスタイルデザインコース卒業。2015年よりissue+designに参画。廃線危機のローカル線を活性化する「御嵩あかでんランド」、デザインの視点と発想を学ぶ「大妻中野中学・高等学校 地域を変えるデザイン実践講座」、結婚できない若者を後押しする「前橋結婚手帳」、介護職の職能と魅力を伝える展示「生きるを共に創る仕事”介護”」などのプロジェクトを担当。

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本連載は令和元年度厚生労働省老人保健健康増進等事業「認知症高齢者等の意見を企業等における消費者への対応や商品開発等につなげる仕組みの構築に関する調査研究事業」の成果の一部をご紹介するものです。