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H.I

年齢:

70 歳 (2019年8月インタビュー時点)

性別:

男性

生年月日:

昭和23年

居住地:

東京都八王子市

同居家族:

妻と2人暮らし

職業:

元染め職人

診断年齢:

69 歳

診断名:

アルツハイマー型

認知症の評価スケール?Mini-Mental State Examination(MMSE)
国際的に最も広く用いられている本人への質問式の認知症のスクリーニング検査。見当識、記銘力、注意・計算、言語機能、口頭命令動作、図形模写等の認知機能の評価からなり、総得点30点で一般に23点以下を認知症の疑いとする長谷川式スケール(HDS-R)
我が国で広く用いられている本人への質問式の認知症のスクリーニング検査。年齢、見当識、3単語の即時記銘と遅延再生、計算、数字の逆唱、物品記銘、言語流暢性の9項目からなり、総得点30点で、一般に20点以下を認知症の疑いとする。
:

MMSE 20点台

要介護度?介護保険制度において、心身の状況に応じて判定される介護の必要度。なんらかの社会的支援を要する要支援(1・2)、部分的(要介護1)から最重度(要介護5)の介護を要する要介護の段階がある。<:

要介護1 (2018年9月時点)

介護保険サービス利用:

週に2回デイサービス利用

当事者同士の集まり頻度:

不定期に地域サロンに行っている

これまでのあゆみ

2009年(60歳)

10桁の電話番号のうち5桁しか覚えられないなど、もの忘れをするなあと思う
家族の電話番号は分かるが、他の人の顔・名前と電話番号が一致しない
控えるためのメモ帳を買い、メモをするようになる

2017年(68歳)

年齢により妻と相談し運転を止める

診断

2018年(69歳)

お酒を飲んで階段から落ちる。病院で受診したところ、認知症ではないかと言われる
妻は何も予兆を感じず、この検査にてまさか、と初めて知る。信じられず、2箇所違う病院へ行く
しかし夫婦二人ともまあいいか、誰でもなるし、考えても治らないしと深刻には受け止めない

2019年(70歳)

運転免許を返納する
うちにいると何もせず心配になるからと、妻がケアラーズカフェから紹介されて地域包括支援センターに相談に行き、そこで紹介されたデイサービスに通い始める。冗談が言える仲間がいて楽しく過ごしている。お酒は一切飲んでおらず、飲みたいと思わない
今は自宅のガレージで靴べらづくりの内職していると、ラジオ体操仲間が「何しているの?」と覗きに来るような日々を過ごしている

人生・生活の喜び

1

発症前後で変わらない喜び

寝ること(雨が降ったら百姓の手伝いをしなくて良いので、子供の頃から雨の日は寝ていられるから好き)

2

発症前後で変わらない喜び

漢字の成り立ちや意味を調べること

3

発症後の喜び

靴べらづくり

4

発症後の喜び

ラジオ体操

5

今は諦めてしまった喜び

犬の散歩。今は犬が死んでしまい散歩をしなくなった。家を忘れても犬が黙って帰るから認知症があってもいい

6

発症後の喜び

デイの仲間と一緒に馬鹿が言えること(「中には本気にする人いるから、人を選ばないとね」)

7

発症前後で変わらない喜び

漢字の成り立ちを辞書で調べて知ること。意味を知り、なるほどと思うような発見があり、面白い

今後やってみたいこと

この生活が続けば良いなと思っている。

生活課題

心身機能障害

社会へのメッセージ

社会へ言うまでの視野はありません、何しろ、気の小さい人間ですから。また今度お会いしたときに考えておきます。良い発表の機会だと思って。

(昔していた染め職人の仕事について)
はじめは4、50センチの正方形くらいの布を染め上げていく。布と布を繋ぎ合わせる時は1ミリ以下にズレを収めて、12メートルの反物を一つ作っていく。出来たときには本当に綺麗で、さらにそれが着れるというのがいいなと思います。自慢ではないけれど、当時よく製造過程の取材が来ていて、私もテレビに出たことが何度かあります。誰でもできることではありませんでしたから、器用な人と不器用な人を選ぶ仕事でした。見る人が見れば、うまい反物とそうでないもの、着物でも仕立て屋さんの腕と相まって、いいものかどうか分かる目を持っています。これは自慢できると思います。

私は手先が器用だから、ここ(デイ)でも、手先の繊細さを活かす仕事がしたいなと思います。

(認知症について)まさか俺がなると思ってなかったから、バカにしてましたよね。そんななるわけねえだろ。でも実際なってみると、結構忘れています。妻に自分が服薬を忘れていたら教えてと言ったにも関わらず、しょっちゅう注意されるとそんなに言わなくてもいいだろと怒りたくなる。でも、自分が頼んでいるから怒るに怒れない。

診察は家族が一緒に行ってくれて、全部答えてくれる。俺が言う前に言っちゃうから、俺の診察じゃない。「これ診察にならないだろ」といつも言うんだけど。自分のことは自分で言うようにしてるんですけど、それを断って先に答えちゃうから、出番がなくなってしまいます。
でもだいたい代弁してくれるから、まあ楽もできていい。
医師も利口で、認知症だとわかっているから、無駄なこと聞き取りしたくないんじゃないかな、俺には聞かないです。
でもこれといった治療方法もないしさ。そんなにひどい仕事ができないほどの認知症じゃないから、いいと思っています。だから余計さ、今が一番良いんです、支障なく続いてくれればね。