佐藤 雅彦
さとう まさひこ
年齢:
65 歳 (2018年11月インタビュー時点)
性別:
男性
生年月日:
1954年5月10日
居住地:
埼玉県川口市
同居家族:
施設に入居中(ケアハウス)
職業:
元通信会社システムエンジニア/現日本認知症本人ワーキンググループ理事
発症年齢:
45 歳頃
診断年齢:
51 歳
診断名:
アルツハイマー型
認知症の評価スケール?Mini-Mental State Examination(MMSE)
国際的に最も広く用いられている本人への質問式の認知症のスクリーニング検査。見当識、記銘力、注意・計算、言語機能、口頭命令動作、図形模写等の認知機能の評価からなり、総得点30点で一般に23点以下を認知症の疑いとする長谷川式スケール(HDS-R)
我が国で広く用いられている本人への質問式の認知症のスクリーニング検査。年齢、見当識、3単語の即時記銘と遅延再生、計算、数字の逆唱、物品記銘、言語流暢性の9項目からなり、総得点30点で、一般に20点以下を認知症の疑いとする。:
MMSE 28点
要介護度?介護保険制度において、心身の状況に応じて判定される介護の必要度。なんらかの社会的支援を要する要支援(1・2)、部分的(要介護1)から最重度(要介護5)の介護を要する要介護の段階がある。<:
要支援1 (2018年11月時点)
障害等級(障害者手帳)<?障害者手帳は、一定の障害があることを認定するもので、各種支援策が講じられる。認知症で身体に障害がない場合は「精神障害者保健福祉手帳(1級から3級)」、身体に障害がある場合は「身体障害者手帳(1級から7級)」を申請することができる。いずれも1級が重度。:
身体障害者手帳 2級 (2018年11月時点)
介護保険サービス利用:
月に2回デイサービス利用
当事者同士の集まり頻度:
月に1回認知症当事者の会に参加
これまでのあゆみ
1987年(33歳)
システムエンジニアとして働き、地域でも管理組合の理事長になるなど、仕事もプライベートも充実した日々を送る
耳鳴りや精神状態が不安定になり、度々病院を受診する。過労が原因との診断を受け、実家で静養。その後復帰するが、休職する
1989年(35歳)
再度復帰するが、事務職に配置転換となり、仕事への意欲を喪失する
1994年(40歳)
生きる目的を求め洗礼を受け、クリスチャンになる。ボランティア活動などを通して、仕事には悩みながらも人生に喜びを見出す
1999年(45歳)
仕事で議事録が書けなくなるなどミスが増えたことに気づき、病院に行くが、「異常なし」と診断される。仕事を続けるものの、精神的に参ってしまい、休職
2002年(48歳)
仕事に復帰。配送係として仕事を続ける
診断
2005年(51歳)
配送先に台車を忘れるミスをしたり、商品を届けた確信が持てなくなり、自分の仕事に自信がなくなる。再度病院を受診し脳のCT検査の結果、若年性のアルツハイマー型認知症と診断される
2006年(52歳)
診断を受けて、病気休暇を取るも、もう仕事を続けるのは無理だと思い仕事を退職。絶望の中で地獄のような生活を送る
2007年(53歳)
なるべく一人暮らしを継続したいという思いで、暮らしを工夫したり、外出するように心がけて行動していた時に、若年認知症家族会「彩星の会」に出会い様々な支援者と出会うきっかけとなる
自らの認知症の体験を話す講演活動を始める
2012年(58歳)
認知症当事者の会「3つの会」の代表を務める
2014年(60歳)
「日本認知症ワーキンググループ」を発足し、共同代表となる
『認知症になった私が伝えたいこと』(大月書店)を出版。その後、日本医学ジャーナリスト協会賞優秀賞を受賞
2017年(63歳)
第32回国際アルツハイマー病協会(ADI)国際会議で、日本認知症ワーキングループ共同代表としてプレゼンターを務める
「認知症とともに歩む本人の会」を立ち上げ、代表に就任する
2019年(65歳)
「佐藤雅彦認知症診断15周年&発病20周年記念ピアノ&トークイベント」開催
人生・生活の喜び
1
発症後の喜び
絵を描いたり写真を撮ること、 個展を開くこと(臨床美術がきっかけとなる)
2
発症後の喜び
ピアノを弾くこと
3
発症後の喜び
山の幸染めで染め物をすること
4
発症後の喜び
SNSを更新すること
5
発症前後で変わらない喜び
教会で神を讃え、聖歌隊で賛美すること
今後やってみたいこと
認知症15周年のピアノの発表会を開催してみたい
生活課題
喜び
1 2 3 5
喜び
4
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生活11分類生活課題DATA心身機能障害知恵
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時間の感覚がなく、何時に食事をするのかが分からない
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買い物から帰ってきて、冷蔵品を冷蔵庫に入れ忘れる
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ファミレスや喫茶店、駅などで流れる音楽がとてもうるさく大音量に流れているように感じる
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喫茶店などにいるとき、自分の周りの音や人の話し声、音楽が大音量で耳に入ってくる
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外の音を全く受け付けず、外食などで外に出られないことがある
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お風呂のお湯を張っても、お風呂に入ることを忘れて翌日に気づく
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障害者手帳をなくす
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メモを取ろうとするが、ノート自体が見当たらず、メモができない
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夕食の弁当を買ったことを忘れて、また夕食の材料を買いに行く
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昨日もらった書類を覚えていない
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約束をした日付を間違える
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スマートフォンをどこかに置いてしまい、なくすことがよくある
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日課としてやっていたポストへ新聞を取りに行くことを忘れる
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食事の前に打たなければいけないインシュリンを打つことを忘れる
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必要な薬を飲み忘れる
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出かける時、部屋の鍵をどこに置いたか分からず見つけられないことがある
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部屋の中で、使った物を元の場所に戻すことができず、見当たらなくなることがある全部ごちゃごちゃに入れて、ここを探せば大丈夫という風にしている
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自分の机の上がごちゃごちゃだが、整理ができず、整理をする気にもならない
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これは下の方に、これは上の方に置く、という整理ができず、部屋が散らかる
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自分の銀行の通帳をなくす
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洗濯機を回しても、回していることを忘れている
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時間を気にしながら行動することが難しくなり、予定の時間通りに行動できない
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携帯電話の日付の表示を見ないと、今日が何月何日なのかわからない
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今日が何曜日かわからなくなる
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今日の予定、スケジュールが分からず、何をして良いか分からない
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明日の予定がわからなくなる
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自分が銀行の口座からお金を引き出したことを忘れている
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500円玉と100円玉は色が似ていて区別ができず、お金の計算を間違える
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自分の印鑑をなくす
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買い物に行く際、何を買うのかを覚えていられない
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買い物中、すでに購入したものを重複して買う
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広いお店では商品の場所や位置が覚えられず、いつも行くスーパーでも初めて行く店のように感じる
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空間や場所の把握が難しく、スーパーで何度も同じ場所を行き来して、効率的に買い物をすることが難しい
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スーパーで、出入口を見つけられず苦労する
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「自分をコントロールできる」という自信が消え失せていく
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聖書を読む以外、何もやる気が起きず、すべて面倒に感じる
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マンションが火事になっているという悪夢が頭から離れない
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眠れなくなったり、一日中寝ていたり、早朝まで起きていたり、睡眠時間が乱れる
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何もやる気が起きず、運動不足になる
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出かける際、どこに行こうとしていたかを忘れることがある
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仕事中、配達先から駐車場へ戻るときにビルの出口を間違える
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左右の感覚がわからず、出口が二つあったり左右に分かれていると、自分がどちらから来たか分らなくなる
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初めて行く飲み屋で、席を立ってトイレに行った後に自分の席に戻ることが難しい
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よく行っている飲食店までの道を迷う
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仕事中、商品の配達先から、自分が駐車した場所へ戻るのに時間がかかる
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待ち合わせ場所に「駅の改札を出て左に直進したところ」などと指定されると複雑に感じる
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左右の感覚がわからず、初めて行く場所では、自分がどっちから来たのか分からなくなる
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左右があることは理解できるが、初めての所では、どちらが右でどちらが左かということが分からなくなる
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道を歩いている時、赤信号が目に入らず横断しようとするなど、自分で意識をして見ないと信号が目に入らない
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地下鉄や夜の道は暗くて目印がないため、困ることがある
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乗り換えがスムーズな車両に乗ろうとするが、強く意識しないと思い通りの車両に乗ることができない
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外出先で、カバンやコートを置き忘れる
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エレベーターに乗ったときに、自分で意識をして手に指令を出さないと行き先階のボタンを押すことができない
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エスカレーターを降りる時、どのタイミングで足を踏み出したらいいのか分からず、緊張する
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エスカレーターに乗る時、どの程度踏み出したら良いのか分からず黄色い線を意識しながら乗らないといけない
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地図を読むことが難しく、実際の道でどう行けばいいのか分からなくなる
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初めて訪れる場所は、道に迷いがちになる
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方向が分からず、空港で迷う
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仕事中、荷物の配送の際に持っていった台車を持ち帰ることを忘れる
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仕事で配達に行った際に、台車の置き忘れや商品の納品忘れがないか確信が持てず、不安になる
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地名や地理をなかなか覚えられない
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パソコンを起動するが、何をしようとして起動したかわからなくなる
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届出の書類を出したか、出さないかで揉めることがある
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メールを送信する際、送信先のアドレスを見間違えたり思い込むことがあり、間違った送信先に送る
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会話をするときに、言葉がすぐに出てこない
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会話をするとき、一対一での会話はできるが、それ以上人数が増えると会話についていくことが難しい
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人の名前が覚えられず、思い出すこともできない
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長くつきあいのある知り合いの人の名前がすぐに出てこない
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自分が会った人の顔を忘れる
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予定や約束したことが分からなくなる
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テレビで見たいと思った番組を見忘れる
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テレビはストーリーが追えないため、面白いと思えない
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第九の合唱を始めたが、ドイツ語を覚えられず、メロディーにのせて歌うことも難しい
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歌手名、曲名が思い出せず、しまった場所もわからないので、自分が聞きたい音楽をすぐに探すことが難しい
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会議の内容は分かるが、要点をまとめることができず、レコーダーに録音しないと議事録を書くことができない
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メモをとる時に、ひらがなや漢字が書けない
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「野菜」「飯田橋」という漢字は読めるが、自分では書けない
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書く字が乱れ、後になってどのように読んだらいいのか分からない
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読んだ本に、ある治療法が出てきたことは覚えているが、その名称を思い出せない
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英会話のテキストに書かれている英文が覚えられない
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文章を書く時、誤字・脱字が多い
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思いついたことを頭でまとめて文章に書き起こすことが難しい
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漢字を見て正しく書き写すことが難しい
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ストーリーをすぐ忘れてしまうので、小説などの本を読む気がわかない
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読書中に1行読み終わっても、目が自動的に次の行に行くことがなく、意識しないと同じ行ばかり読んでいる
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仕事中に、今していたこととは別の作業を間にはさむと、元の作業に戻れなくなる
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仕事でデータ入力をする際に一文字ずつ確認をしないと入力できず、時間がかかり、仕事の能率が悪くなる
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仕事で発注データを入力しながら、一時間おきに注文書をFAXするという作業ができない
心身機能障害
社会へのメッセージ
認知症の人は何も考えられない、何もできない、判断力もないという誤解を解くことが願いです。自分自身がとらわれる常識の殻を破り、前を向いていくと、実は、その気になればできるんですね。ありのままの自分を受け入れ、自分の力を生かして大切に暮らしを続け、社会の一員として楽しみながらチャレンジしていく、そして自分の能力を信じること。私たち本人同士が出会い、つながり、生きる力をわき立たせ、元気に暮らしていく。自分ができなくなったら、元気な認知症当事者に会って力をもらう。自分の思いや希望を伝えながら、味方になってくれる人たちを身近に見つけて一緒に歩んでいく。認知症の人が元気に活動することが、誤解を解く近道だと思っています。