飯田千絵(仮名)
いいだ ちえ
年齢:
54 歳 (2021年6月時点)
性別:
女性
生年月日:
1967年
居住地:
東京都中央区
同居家族:
ひとり暮らし
職業:
元派遣社員/団体嘱託職員
発症年齢:
50 歳頃
診断年齢:
53 歳
診断名:
健忘型軽度認知障害
認知症の評価スケール?Mini-Mental State Examination(MMSE)
国際的に最も広く用いられている本人への質問式の認知症のスクリーニング検査。見当識、記銘力、注意・計算、言語機能、口頭命令動作、図形模写等の認知機能の評価からなり、総得点30点で一般に23点以下を認知症の疑いとする長谷川式スケール(HDS-R)
我が国で広く用いられている本人への質問式の認知症のスクリーニング検査。年齢、見当識、3単語の即時記銘と遅延再生、計算、数字の逆唱、物品記銘、言語流暢性の9項目からなり、総得点30点で、一般に20点以下を認知症の疑いとする。:
MMSE 30点 (2019年9月時点)
当事者同士の集まり頻度:
定期的に参加する集まりはないが、オンラインで開催される集まりの中で興味が湧くものに、都度参加している
これまでのあゆみ
2015年(48歳)
銀行、製薬会社など、様々な業界で仕事をしてきた
40代の終わりに、倦怠感を感じるようになり更年期を疑って婦人科を受診していた
振り返れば、40代後半から認知症の症状がでていたと感じている
2017年(50歳)
新たに仕事を始めた派遣先で、それまでは新しい環境に入ると、未経験業務にも比較的早く慣れることができたが、時間が経っても落とし込まれていかないことに違和感を抱く
当時は、疲労または年相応の衰えかと思っていた
2019年(52歳)
GW中、昨日行った場所を忘れてしまう、本人が指定した馴染みのある場所なのに違う場所に見え上手く待ち合わせられない、などの出来事がいくつも起こっていた
友人に相談したところ、心療内科を勧められ、6月にクリニックを受診
本人が感じる違和感や物忘れがひどいことを伝えるが、医師の診断は「うつ状態」とのことだった
受診直後、派遣会社に状況を伝えると「退職ですね」と言われ、仕事をやめることになる
その後も通院は半年間続いた
この間にも会社や家のエレベーターで執務室や自宅が何階だったかわからなくなる、会議中にでた内容の時系列の整理ができなくなったり人の名前がわからなくなるという出来事が起こっていた
向精神薬を処方され、約半年間、病名が次々と変わる中、様々な薬を飲んでいた
その間薬の服用から、寝たきりの日々が続き、スマホが重くて寝ながらみることもできないほどであった
一向に症状が改善されないため、自身で総合病院の心療内科を受診し、MRI、血液検査などを受ける
結果、前頭葉に隙間があること、血流が少し悪いことを指摘されるが、認知症という診断はなされなかった
この受診をきっかけに薬の服用を止める
薬を飲んでいたことによる体調不良もあったと思うし、正しく診断されていれば継続して働けたのではないかと思っている
11月から新たな派遣先で仕事を始めた
診断
2020年(53歳)
6月に派遣先での契約期間が終了
また働きたい、という思いはずっと心の中にある
その後、薬の服用を止めても一定水準までしか回復しないことに違和感を持ち、医療機関に相談
9月に総合病院の紹介で認知症専門医のいるクリニックを受診
10月に検査結果から、前頭葉萎縮が進行しており、MCIと初めて診断される
それ以来、同クリニックを定期的に受診し、問診と服薬を続けている
その間、「また働きたい」という思いを強くもちながら、以前から知っていた職業訓練学校に通い始める
ある日、訓練学校で自身の関心について話す機会があり、認知症の現状についてコメントをしたところ、クラスメイトから反響があり、現職の求人情報を紹介される
自身の関心に沿う就職先だったため、採用試験を受け内定、新たな就職先が決まる
2021年(54歳)
4月から団体の嘱託職員として就職
本人が認知症診断までに時間を要し苦しんだ経験や、仕事を辞めざるをえなかった経験などから、同じように苦しんでいる人の力になりたいという思いを強くし、現在は認知症に関する情報を収集したり、自分の経験をブログで発信したりしている
今後は、これまでの経験や人脈を生かして、認知症など障害のある人が居心地よくありのままで過ごせる居場所を作ったり、拠点どうしをつなぐ役割を担っていきたいと考えている
著書・リンクなど
サイト|『認知症の生き方』~本人のブログ~ LINK
人生・生活の喜び
1
発症前後で変わらない喜び
嗜好はほぼ変わらない
2
今は諦めてしまった喜び
強いて挙げれば、写真撮影や旅行などの趣味が縮小傾向だがコロナの影響が強い
3
発症後の喜び
認知症をテーマとした新たな出会い・チャレンジ
今後やってみたいこと
これまでと変わらない生活
規模は縮小せざるを得ないが、できる範囲がどこまでか探りながら調整していきたい
生活課題
喜び
2
喜び
1
喜び
3
-
生活11分類生活課題DATA心身機能障害知恵
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着替えの時、上下左右がわからなくなる手・頭を出す場所などに大きな洗濯バサミを目印としてつけておく、靴の左右を揃え洗濯バサミで留め置く
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どこになんの服があるかわからなくなるできる限りものを少なくし、種類ごとにしまう場所を1か所決める
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温度変化に鈍感になる温度計購入
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シンクに食器がたまっていると混乱する食器洗いを食前(料理中)と食後の2回に分ける
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食材を適当にいれると何がどこにあるか分からなくなる食材によって入れる場所を決めておく、買いだめ・ストックを減らし、中が見やすく置く
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レシピを読みながら即理解して料理するのが難しい3つ程度の手順で作れるものを選び、手順を自分がわかるように書き換えたメモをみながら料理する
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切った野菜を1日まな板の上で放置していたことがある料理している途中で他のことをしない、忘れることに備えてタイマーなどもセットしておく
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料理に必要な道具がどこにあるかわからなくなる探す作業は負担が大きく、調理の妨げになるので、必要な道具を見えるところに揃えてから料理を始める
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予定を忘れることがある紙カレンダーだけでは足りないため携帯のスケジュールにいれておき、付箋を活用する
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目の前にある書類が、なんの書類かわからなくなる学校関連のものはピンク、個人の予定は緑など、カラーファイルで色分けを使って分類・収納する
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鍵をどちらにまわすかわからなくなる勢いよく強く回さないようにしている
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鍵をかけたか心配になることがある
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鍵がどこにいったかわからなくなる鍵に目立つキーチェーンをつけたり、バッグにそのキーチェーンをつけて見つけやすくする
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時計の文字がよみづらくなるデジタル表示を使用し、文字を大きくする
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時間の感覚がわからなくなることがある、自分ではちょっとの時間でも3時間経過していたことがあったストップウォッチで1分測ってその感覚をしみこませる、時計・カレンダーを都度見て確認する
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サーチライトで照らされたような幻視がみえることがある
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携帯アラーム音の幻聴がきこえるアラーム音を一時オフに。幻聴を招きやすい機械音から自然界にある音(小鳥のさえずり)に変更した
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暗証番号がわからなくなる使わないものを解約し、整理した後でスマホに全てメモする
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いつも行くスーパーで商品がどこにあるかわからない天井の表示で確認したり、他の買い物客がなにをとっているかで見当をつける
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買い物中、何を買いに来たかわからなくなる必要なものは予めスマホにメモしておき、小さいメモに書き写して持っていく(買い物中のスマホ操作を回避)
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同じものを何個も買ってしまう保存のきかないものは、使い切ってから何度も本当にないか確認してから買うようにする
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医師に「働きたい」という気持ちを伝えると、いつも反対される世の中には働きたい人がたくさんいるはずだから、働ける場所や仕組みを作っていきたい
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疲れやすくなった疲労を感じたら少しでも(10-20分)寝る、睡眠記録アプリを使用、効果的な睡眠を試行錯誤中
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毎日運動を意識的にする朝起きて肩から上だけの腹筋をすると血の巡りがよくなり頭がスッキリする
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薬を飲んだかどうか、思い出せなくなる錠剤に月から日まで曜日をかいておき1週間たった印として土日には〇をつけておく
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以前はお風呂が気持ちいいと感じていたが、面倒くさくなった浴室送風、入浴剤など様々試してどの環境が気持ちよく感じるか試した
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新しい場所にいくのに、事前の入念な計画が必要になった地図アプリの検索結果を画像保存、移動中に現在地とともに確認、乗り換えや降車の予定時間にタイマーセット
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自転車をどこにおいたかわからなくなる。自転車に乗ってきたかどうかも忘れてしまうことがあった自転車を置いたときに、番号や周りの特徴を携帯にメモし、時には写真を撮ってからその場を離れる
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通勤経路を間違えないように、乗り換えなど常に意識していないといけない経路などわからなくなったときには人に聞く
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電車に乗り、他のことをすると降りる駅で降りられなくなる以前は本を読んだりスマホをみたりしていたが、今は、乗っている間はなにもしない
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体調が悪いときはエスカレーターがこわくて乗れなかった、しがみつきながら乗るエレベーターと階段を利用
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階段では足元をみると足がでなくなってしまう、どこに足を出そうか迷ってしまう少し先の壁を見るなどして意識をそらせると階段を上り下りできる
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自分で誘った約束を忘れそうになったことがある交友関係をしぼり、限られた友人とだけの予定をいれるようにする
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メールを読んだつもりになり、読み終えていないのにメールを閉じてしまうことがあるメールを閉じるときは最下の署名までスクロールして最後まで読んだか確認する
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仕事の休憩時間などに同僚と話したり聞いたりした内容を忘れる話の内容を付箋にメモ、それを携帯のメモにいれ人ごとに情報をまとめる、同僚は「ワーク」のカテゴリに分類
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人に会うのを控えていた時期もあったお誘いがあっても無理せずに断るようにしている
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友人の顔と名前が一致しないことがある友人に関する情報や思い出を携帯、カレンダー、アドレス帳などに入力しておく
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趣味だった写真の面白みが感じられなくなってきた。構図やピントが合わなくなるなど、思うように撮れない
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テレビの内容・展開についていくことが難しい、うるさく感じるテレビは以前ほどみなくなった、一話完結するものを中心に短時間みている
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アルファベットのaとeやoの違いがわからなくなる、文字がつながってみえる読みやすいフォントに変えてから作業することもある、ニュースなどは新聞ではなくネットでみている
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授業の内容を理解してノートにとることは難しい印象的だったことだけメモする、学生としては残念な私であるが授業に出ることで1つでも学ぼうとは思ってい
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本は読んでも読んだ記憶が全くなくなる、長い本は最初から読み返すその瞬間を楽しむ、自分が印象に残った文・著者をメモに残したりする
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定例会議のメンバーでも名前を思い出せない誰がどこに座っているかの簡易座席表を作り見ながら参加する
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仕事でわからないことがある時に、誰に聞いていいのか判断ができないことがある勤続年数や役職、担当業務など同僚に関するメモを蓄積しておき、その情報から聞く人を判断する
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会議で誰がいつどんな内容を発言したか、量が多すぎて保持できない
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その日にやらなければいけない業務をきちんと終えたかわからなくなるタスクがきた時点で、付箋に書いてパソコンの電源ボタンの所に貼っておき、帰る時に終わっているか確認する
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複雑な内容は理解できないため、教えてもらわないとできないことがたくさんある教えてもらうかわりにできる事があれば進んでやる(シュレッダーのゴミ袋交換、FAX、郵便の配布等)
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従来のように業務の内容を覚えることは難しい、説明を読むのも難しい情報の要点を整理し、自作のデータベースに保存して、参照と加筆を繰り返しながら業務にあたる
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仕事の手順がわからなくなるマニュアルの内容を自分が思い出せるような形でメモしそれを参照する、onenoteは職場で活用しやすい
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以前は時間のかからなかった資料の整理やメール作成に時間がかかる
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作業スピードが1/3程度に落ちる前と同じスピードを目指すのではなく、持続的に進めることを優先し、ペース配分しながらすすめる
心身機能障害
社会へのメッセージ
病気があっても安心して優しい気持ちで暮らせる街になってほしい
(何が足りないのか試行錯誤中、自分の体験を共有してアイディアを集めて行きたい)