樋口 直美
ひぐち なおみ
年齢:
56 歳 (2018年10月インタビュー時点)
性別:
女性
生年月日:
1962年
居住地:
千葉県
同居家族:
夫と2人暮らし
職業:
文筆家
発症年齢:
40 歳頃
診断年齢:
50 歳
診断名:
レビー小体型
認知症の評価スケール?Mini-Mental State Examination(MMSE)
国際的に最も広く用いられている本人への質問式の認知症のスクリーニング検査。見当識、記銘力、注意・計算、言語機能、口頭命令動作、図形模写等の認知機能の評価からなり、総得点30点で一般に23点以下を認知症の疑いとする長谷川式スケール(HDS-R)
我が国で広く用いられている本人への質問式の認知症のスクリーニング検査。年齢、見当識、3単語の即時記銘と遅延再生、計算、数字の逆唱、物品記銘、言語流暢性の9項目からなり、総得点30点で、一般に20点以下を認知症の疑いとする。:
MMSE 25点 (2013年時点)
要介護度?介護保険制度において、心身の状況に応じて判定される介護の必要度。なんらかの社会的支援を要する要支援(1・2)、部分的(要介護1)から最重度(要介護5)の介護を要する要介護の段階がある。<:
自立
介護保険サービス利用:
利用していない
当事者同士の集まり頻度:
レビー小体型認知症の当事者同士の交流のための掲示板を運営
これまでのあゆみ
2000年(38歳)
人の幻視を繰り返し見るが目の錯覚だと思っていた
2004年(41歳)
不眠、頭痛、倦怠感で病院を受診し、うつ病と誤診される。治療薬によって重い副作用が生じたが、約6年間誤った治療を続け、苦しんだ
2010年(47歳)
薬物治療をやめて健康を回復した
2011年(48歳)
人の錯視を頻繁に見るようになった
2012年(49歳)
幻視を自覚し、専門医を受診したが、診断も治療もされず経過観察となった
体調不良と繰り返すミスのためパートの仕事を退職
診断
2013年(50歳)
症状から若年性レビー小体型認知症と診断される。治療を開始すると症状が改善
2014年(51歳)
この頃から匿名で認知症のプロジェクトに協力したり、取材を受けるようになる
2015年(52歳)
「レビーフォーラム2015」で初めて当事者として実名で登壇
『私の脳で起こったこと』(ブックマン社)を出版(日本医学ジャーナリスト協会賞優秀賞受賞)
2019年(56歳)
思考力は変わらないが、注意障害、時間感覚の障害、空間認知障害、嗅覚障害、自律神経障害、幻視、幻聴他さまざまな症状がある
著書・リンクなど
サイト|樋口直美公式サイト LINK
書籍|『誤作動する脳』
出版社: 医学書院出版年: 2020年
LINK
書籍|『私の脳で起こったこと』
出版社: ブックマン社出版年: 2015年
LINK
書籍|『在宅医療カレッジ〜地域共生社会を支える多職種の学び21講〜』
出版社: 医学書院出版年: 2018年
LINK
書籍|『みんなの当事者研究』
出版社: 金剛出版出版年: 2017年
LINK
書籍|『認知症になっても人生は終わらない〜認知症の私が、認知症のあなたに贈ることば』認知症の私たち〜』
出版社: harunosora出版年: 2017年
LINK
書籍|『認知症の人たちの小さくて大きな ひと言 〜私の声が見えますか?〜』
出版社: harunosora出版年: 2015年
LINK
書籍|『これからの医療と介護のカタチ〜超高齢社会を明るい未来にする10の提言〜』
出版社: 日本医療企画出版年: 2016年
LINK
サイト|誤作動する脳 レビー小体病の当事者研究 LINK
人生・生活の喜び
1
今は諦めてしまった喜び
世界各国の色々な料理を作ること
2
発症前後で変わらない喜び
読書をすること
3
発症後の喜び
病気や認知症についての誤解を解くこと
4
発症後の喜び
人との出会い
今後やってみたいこと
認知症に限らず、脳の病気や障害をもつどんな方もその家族も、社会の中で普通に生活していけるようになればいいなぁと考えています。そのためにできることを探したいと思っています。
私が診断を受けた2013年には、レビー小体型認知症は、誰も知らない病名でしたし、多くの人が、誤診や薬の副作用で苦しんでいることも知られていませんでした。でもこの6年間でその状況は、かなり変わってきたと感じています。認知症の捉え方も多くの方々のご尽力があり、劇的に変わったと感じます。そんな変化が、他の病気や障害にも広がっていけばと願っています。
生活課題
喜び
1
喜び
4
喜び
3
喜び
2
-
生活11分類生活課題DATA心身機能障害知恵
-
洋服はどこに何があるのか、タンスを全て開けて見てみないと分からないので、衣替えをすることが難しい
-
夫の背広がどこにしまってあるのか全くわからない。夫に聞かれても探せない
-
スーツケースに何を入れたのか分からなくなる。すべて出して並べてみても余計に何が必要か分からなくなる
-
遠出をするときに、先の出来事を想像して、必要なものをスーツケースに入れるということができない
-
こういう日はどういう格好をすればいいのかわからない。何を着るかが思いつかないので同じ服ばかり着る
-
自分がどういう服を持っていて、どこに何が入っているのか覚えていられない。服の管理ができない
-
実際は動いていないが、テーブルの上のごまが動いて見える
-
動かないはずの、白い皿の上の醤油の跡が動いて見える
-
食事の準備中にものを倒す・こぼす・皿を割ることが増えた
-
戸棚にどんな食器が入っているかわからない。開けてみても戸を閉めたとたん何が入っていたかわからなくなる
-
扉をあけて中を確かめないと、冷蔵庫の中に何が入っているか全くわからない
-
夫のために自分でおかずを温めたことを忘れる。温めたという時間が、存在していない感覚
-
実際はしないのに腐った魚の匂いがする。悪臭が一面に漂っていると感じる
-
料理をしながら、「いい匂いだ」と感じることがない
-
コーヒーの匂いを感じない
-
食べ物の匂いがしない
-
料理は単純なものしか作れない。一度に何品も作ることができないので、淋しい食卓の日が続く
-
数日分の献立を考えることができない
-
夕飯に何のメニューを作ったか覚えていなくて、いつも同じものを作っている
-
食事のメニューやレシピが思い浮かばない
-
ひき肉料理のメニューが麻婆豆腐しか思い浮かばない。特定のメニューしか思い浮かばない
-
調理に必要な食材をパッと選ぶことができない
-
調理中、材料をどう切るかわからなくなる
-
そうめんが茹だるまでの時間の長さがかわからないタイマーを使って調理時間を計る
-
調理中、どれくらい焼けているのかいているのか焼き具合がわからない料理の途中で肉や魚を半分に切って、中の色を見て、焼け具合を判断する
-
二つ以上の鍋を同時に火にかけると、一方のことは意識から抜け落ちてしまい、鍋を焦がしてしまう鍋をかけた時にタイマーをかけておき、忘れても音で知らせてもらう
-
調理中、味付けをどのようにすれば良いのかわからなくなる
-
調理の味付けがうまくできず、薄くなってしまう
-
料理中、味見用の皿やスプーンを出したことを忘れ、味見のたびに用意してしまう
-
味噌という漢字を見て、みそ と認識するのに時間がかかる
-
食後、運動した時、気圧が低い時に、血圧が低下する
-
大切なものの保管場所を忘れてしまい、通帳やカード、財布など探し物が増えたテーブルクロスに小袋を縫って、自分の席の前の小袋に大切なものや薬を入れて無くさないようにした
-
いま誰かが後ろを通った、という気配を感じる。見てはいないが、確実にだれかがいるという強い気配を感じる
-
実際には切れていないが、足の指が切れているような痛みを感じる
-
日記の字が年々汚くなっていく
-
曜日がわからず、休みの日に夫を朝起こしてしまう
-
置き場所を決めていた時計をどこかに置いてなくす。探し物をすると思うだけで、不安感や軽い動揺を感じる
-
自分で書いたメモをなくしてしまい、見つからない
-
ゴミを捨てる日がいつかわからなくなる
-
生ゴミを出さなければいけないと考えていると、生ゴミの臭いがしてくる
-
自分が今しようと思ったことを忘れる
-
今日が何曜日なのか分からない。週の初めなのか終わりなのか考えないとわからない。
-
スケジュールを覚えられない
-
カーペットの模様が動いて見える
-
床にあったゴミが、床を這う丸っぽい虫に見える。虫の姿が消えるまで、ゴミだとはわからない
-
壁のシミが、人の顔に見える
-
壁が突然、半球状に盛り上がって見える
-
実際には動いていないのに窓の外の景色が突然動いて見える
-
布団の上に知らない男の人が寝ている姿が見える。布団が男の人に見えた
-
前日に考えていた、やらなければいけないことを思い出せない
-
買うはずだったものを買い忘れてくる買うものを書いたメモを持っていく
-
買い物へ行って、何を買えばいいのかわからなくなる買うものを書いたメモを持っていく
-
簡単な計算ができない
-
レジでお会計をしようとした時に、100円と1円を見間違える
-
何もしなくても、急に血圧が下がる
-
夏でも汗をかかず、熱がこもって発熱する
-
常に幻視がいつ、どこに現れるかわからず怯えており、それを誰にも言えない
-
気温の変化に対応することが難しく、冷房や寒さに弱くなったり、寒暖差で体がぐったりする
-
気圧が低下すると体がぐったりする
-
理由がわからず発作のように体調が悪くなる。ストレス、疲れ、低気圧などが引き金になることもある
-
ホテルだと眠ることができない
-
病気を隠していた頃、孤独感に悩まされた
-
不眠、頭痛、倦怠感がひどい
-
帰宅時間が遅い日はなかなか寝付けない
-
悪夢を見て、大音量で絶叫する
-
自分が昼寝をしたかどうか忘れる
-
ヨガやジョギングなどの運動をしても爽快感を感じられない
-
お風呂のお湯がぬるぬると感じ、浸かること自体が気持ち悪い
-
お風呂の熱い冷たいが感じられず、適温がわからない
-
自分が歯磨きをしたかどうか思い出せない
-
夜は疲れているため様々な症状が出やすく、出歩くことが難しい夜はあまり出歩かないようにする
-
入院後に体調不調となり畑の管理や釣り場に行くことが困難となる自宅のベランダでプランターで野菜を作るようになった
-
移動中、目にする情報が多すぎると混乱し、とても疲れる
-
よく知っているはずの「新橋」という地名を聞いても、具体的な場所・雰囲気・そこでの思い出が思い出せない
-
聴覚が過敏になり、街でふいに音が襲いかかってくる感覚がある
-
歩き慣れた道に、新しい家が建った途端に、見慣れない道だと感じてしまう
-
信号待ちの普通の車が、グシャグシャに潰れた事故車に見えた
-
道を歩きながら見る猫を、本物かどうかと考え、疲れてしまう
-
標識や看板の直進を示す矢印が、天井の方向を指しているように見える
-
駅の案内表示の矢印が多く、目に突き刺さるように感じる。情報量に圧倒され頭がクラクラし、体調不良になる
-
標識や看板にある、斜めや丸く曲がっている矢印がどこを指しているのか理解できない
-
助手席に居て、車が道路の真ん中を走っているように見えない
-
車での移動が心配免許返納を考えている
-
車を駐車した時に、左右の車との距離がひどく違って見える
-
停めたはずの車が、自分に向かって進んでくるように見えてパニックになる
-
車の中に実際にはいない蜘蛛が見える
-
車の助手席に実際にはいない女性が見える
-
夜の運転中、人がいないようなところに人がいると思ったら、建築資材だった
-
運転中に実際にはいない大きな虫が見える
-
電車の進行方向がわからない
-
カバンを忘れてくる
-
無意識に信号を無視していた
-
電車の乗り換えがわからず、困る
-
切符をなくす
-
地図を読むことが難しい。自分のいる場所がわからない
-
地図を逆さまにするとわからなくなる
-
雑音が様々ある場所で1つの音に集中するのは難しく、すぐ疲れてしまう。脳が疲れると何も聞きたくなくなる
-
役所で自宅の住所を書いたときに、番地を間違えて書いた
-
普通に書ける時もあるが、手紙を書くとき字のバランスがうまくとれず、書くのを止めることがある。
-
その出来事がいつのことだったのかが思い出せない。手帳を見て書いてある単語や場所を見れば思い出せる
-
時間感覚が薄れて、友人にあっても「久しぶり」という感覚がない
-
後ろにある携帯の着信音が、前から聞こえる
-
疲れている時、居酒屋で人と話していると雑音ばかり耳に入り、目の前の人の言葉が聞き取れなくなる時がある
-
人に話したこと、人から聞いたことを忘れてしまうことが増えた
-
夫に2回言われた大切な依頼事を直後に忘れてしまう
-
何度も同じことを聞き、子どもに「もう何回も言ったよ」と言われる
-
人の名前が思い出せない
-
町内で定時に鳴る音楽が、違う時間に繰り返し聞こえる
-
光と音を痛みとして感じる
-
周囲が突然明るくなると、痛みとして感じる
-
体調が急に悪くなり、ドタキャンをしてしまうのではないかと心配になり、約束をすることをためらう
-
温泉のお湯が気持ちよくない。寝汗で濡れたパジャマを着ているような不快さを感じる
-
テレビの画面がまぶしく感じる
-
テレビのCMの音が刺さるように感じる
-
テレビの音が別の部屋から聞こえる。音が違う方向から聞こえる
-
アロマテラピーのことを考えていると、実際にはない、好きなアロマの香りがする
-
海の写真で、波が実際に動いて見える
-
多くの情報を俯瞰して把握し、要点を整理することが難しい
-
文章のアイデアは浮かぶが、頭の中で整理できず、文章の構成は浮かばない
-
「超」という漢字が書けない
-
「仏」という漢字が一つの字に見えず、「イム」と読む
-
「伊藤」という名字を「いふじ」と読む
-
新聞を読んでいるときに、目の前に実際にはいない飛ぶ虫が見える
-
暗証番号が思い出せない
-
同僚の名前が出てこない
-
文章を書くという仕事ひとつに集中しないと作業できない
-
仕事中、自分がしたことを覚えていなくて上司に叱責される
-
毎日仕事でミスを連発し、精神的にも追い詰められる
-
仕事でどんなミスをするかわからないので、自分が恐ろしい
-
暗い所で視力が落ち、原稿が見えにくくなる。昼間は見えていたのに、夜は見えなくなった
-
仕事で一度も忘れたことのない手順がわからなくなった
-
職場で午前の仕事を終え昼食を済ませた後、猛烈な眠気、手がこわばり、寒気を感じた
-
毎日使っている職場の内線番号が思い出せない手帳に内線番号を書いておき、常に持ち歩く
心身機能障害
社会へのメッセージ
認知症の捉え方、理解の仕方は、大きく変わってきました。「人災」で起こっていた不幸な混乱の多くは、防ぐことができます。今は、診断後も笑顔で生活する方が増えています。人・社会とつながり、張り合いのある生活を続けることは、どんな治療よりも効果があります。闇雲に認知症を怖れるのではなく、自分が認知症になっても笑顔で暮らせる社会をつくりましょう。その第一歩として、まずあなたの認知症の捉え方をアップデートして下さい。